第777回/心の傷が消える時 - キズアトモヨウ(Unreality) - 不思議系
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第777回/心の傷が消える時 - キズアトモヨウ(Unreality)

不思議系
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キズアトモヨウ

キズアトモヨウ■制作者/Unreality(ダウンロード
■ジャンル/双子の姉妹の傷ノベル
■プレイ時間/30分

主人公蓮二の誕生日、7月1日。その日は、蓮二の幼なじみの女の子、理音の亡くなった日でもあった。理音の死の原因が自分にあると思っていた蓮二だが、彼の目の前に理音の幽霊が現れる。2人は色々な場所を巡りながら思い出を探っていくが、理音は何か願いがあるらしく、そのために幽霊となって現れたらしい。凝った仕掛けで姉妹の絆を描く短編ドラマ。

ここが○

  • 短いが、仕掛けが凝っている。
  • 思い出を主体にしながらテンポの良い構成。
  • 意外で伏線回収が見事なラスト。

ここが×

  • 展開の都合を感じるシーンが少々。
  • 凛の秘密に、若干の蛇足感。
  • 主人公である蓮二の影が薄い。

■心の傷が消える時

NaGISA netではすっかりお馴染み、「四葉のクローバー」「イミテーション・フラワー」「とある吸血鬼ちゃんの人生」の「Unreality」さんによる最新作です。この作者さんは、長編は言うに及ばず、短編においても伏線を仕込んで読者をあっと言わせるような仕掛けを盛り込んでくるので、この作品は果たしてどうだろうかと思いながらプレイしました。

そしてこの作者さんの作品では、女性同士の関係を描くのにもまた特徴があります。「イミテーション・フラワー」「四葉のクローバー」「ツクリモノガタリ-真実のアリカ-」「BLOOD SUGAR」など、いずれもその系統の作品です。だからと言ってワンパターンに陥っていないのが、この作者さんの発想の豊かなところを思わせますね。どの作品も、手を替え品を替えどこかに新鮮味を盛り込んでくるところが凄いなと感じさせます。

キズアトモヨウこの作品の主人公の蓮二には、幼馴染の双子の姉妹がいました。理音と凛というその姉妹と、蓮二はいつも仲良く過ごしていたのですが、ある時理音は交通事故に遭い、命に別状はなかったものの、顔に消えない傷跡が残ってしまいます。そして理音はその傷跡を苦にして、ビルの屋上から飛び降り自殺をしてしまったのです(最近、「自殺もの」がやたらに多いですね……)。

蓮二は罪の意識に苦しみ、何とか償いをしたいと思っていたのですが、ある年の蓮二の誕生日に、蓮二の元に数年前に死んだはずの理音が、幽霊として現れたのです。理音は何やらこの世に思い残した願いがあるようで、それを果たすべく蓮二と1日一緒に行動します。こうして、2人の思い出を巡る1日が始まります。物語は、合間に過去の回想を挟みつつ、2人が思い出の場所を回っていくという構成です。

この手の作品ですと、回想シーンに重点を置き過ぎるとテンポが悪くなりますし、さりとて回想が不十分だと説得力がなくなります。この物語は、そのらのバランスが絶妙で、いいテンポ感を保ちつつ、現在の状況にしっかり説得力を持たせるだけの描写がされています。回想シーンって、つい書きすぎたり、あるいは作者は全てを知っているため、逆に省きすぎることが多いんですが、そのギリギリのラインの見極めが非常に見事だったと思いました。

そして後半では理音の死の真相が明らかになり、更に理音のこの世での願いも知らされることになります。短い物語なのですが、この辺の秘密が分かるタイミングもとても良かったと思います。中盤までの回想と現在の描写のバランスの良さがあればこそ、ラストにも唐突感がなく、またラストの事実にも十分な真実味があり、素直に受け入れられました。全体に構成がとても優れた物語です。

ただ、理音が死んだ原因が、えらくどろどろとしているんですよね。いえ、エピローグの前で終わっていればそこまでどろどろとはしていないんですが、エピローグで「え、それはちょっと……」と(汗)。なのに肝心の理音は全然ネガティブなことを言わないというのは、これはこれで姉妹の絆を描出するにはありな手法であるとは思いますが、それにしてもちょっとあっさり赦しすぎのような気がしますし、あのどろどろな関係でラストだけ取ってつけたように爽やかに終わっているので、そこは少し違和感を感じてしまいました。

問題の(?)エピローグ。確かに上に書いたように気になる点はあるのですが、タイトルやキャラクターの名前、章題にまで仕込まれた仕掛けが解ける様子には、なるほどと唸らされました。この作者さんの面目躍如ともいえる幕引きです。この短編でこの仕掛けを盛り込み、さらに物語としても無理なく仕上げるというのは、なかなかできることではありません。その意味で、短いながらも「物語を味わった!」という満足感の非常に高い物語でした。設定だけだと、非常に鬱なエンドにもなりかねないのですが(理音が既に死んではいるものの)、綺麗にまとまった終わり方で、読後感も良好です。

ツールはティラノスクリプト。選択肢はなく、プレイ時間は20〜30分くらい。理音と凛の双子の姉妹は、過去描写も含めて魅力的なキャラクターでしたが、反面主人公の蓮二は少し影が薄いようにも感じました。彼にもう1つ見せ場があれば良かったような気もしますが、この短さですからそこまで描いてテンポを悪くするよりは、案外今のままがベストなのかも知れません。とにかく、この作者さんの作風が気に入っていれば、今作も間違いなく楽しめるはずですし、この作者さんの作品を初めてプレイするなら、長さやわかりやすさからも、この作品から入るのは名案だと思います。
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