第778回/安かれ、汝が魂よ - かくも幽けき命のかたち(白羽雪人) - 不思議系
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第778回/安かれ、汝が魂よ - かくも幽けき命のかたち(白羽雪人)

不思議系
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かくも幽けき命のかたち

かくも幽けき命のかたち準推薦
■制作者/白羽雪人(ダウンロード
■ジャンル/屋上の幽霊と邂逅ノベル
■プレイ時間/45分

かつて教え子を目の前で死なせてしまった教師の主人公。オカルトに詳しい女生徒神崎夜は、幽霊は実在すると言い放つ。そしてまた屋上へ向かう階段へ足を運ぶ主人公。そこにいたのは、亡くなった春風志乃の幽霊だった。主人公が何とか志乃を助けたいと思う中、ある日主人公の前にオカルト雑誌の記者、時沢徹が現れた。ラストの真実に驚く短編幽霊もの。

ここが○

  • 高い文章力、描写力。
  • 凝ったマルチエンド。
  • 隠された真実に二度三度驚かされる。

ここが×

  • 文章が横長すぎて読み辛い。
  • 表現がちょっと捻り過ぎていると感じるところが。
  • 少し伏線の不足を感じた。

■安かれ、汝が魂よ

幽霊ものは今まで数多く紹介してきました。それこそ古くは「Moonlight Blue」から「ゆうとっぷ」から前回ご紹介の「キズアトモヨウ」まで、それこそ枚挙にいとまがありません。そして幽霊ものには、定番とも言えるパターンがありますが、この作品は、それを逆手にとって非常に上手いどんでん返しを見せてくれた物語です(作者さんは、パターンを利用したつもりなどないかも知れませんが)。タイトルは「かくもかそけきいのちのかたち」と読むようです。

まずいきなり気になった点を書くのですが、この作品はワイド画面で、全画面テキストウィンドウです。それはそれでいいのですが、ワイドの全画面ウィンドウにいっぱいに文章が表示されるため、視線移動距離が長くなり、かなり読み辛いです。おまけにフォントサイズの小ささが読み難さを助長しています。フォントを少し大きくし、テキストウィンドウの左右を切るだけでかなり変わったと思うのですが。文章力勝負の作品で、文章が(見た目の問題で)読み辛いのは、ちょっともったいない気がします。

かくも幽けき命のかたちさて内容についてです。主人公(名前は明記されません)は高校教諭ですが、かつて目の前で女生徒を死なせてしまったという負い目があります。そんな彼は、図書室でオカルトマニアの少女、神崎夜と雑談に興じるのですが、夜はオカルトマニアでありながら、妙に現実的なところがあり、主人公を当惑させます。しかし、そんな夜が何故か「幽霊は絶対にいる」と断言してはばからないのです。

そして主人公が屋上への階段へ行くと、亡くなった女生徒春風志乃の幽霊が。志乃はあっけらかんと語りますが、主人公の罪の意識は増すばかり。何とか志乃を助けたいと強く感じます。そこにやってきたのは、オカルト雑誌の記者時沢徹。時沢は、この学校の噂を聞きつけ、主人公に取材を申し込んできたのですが……。このように、登場人物は一見相互に関係がないように見えます。そしてここまでのところでは、幽霊である志乃の心残りを何とか解消しようという流れのように見えます。

しかしこれが、二重に上手く仕組まれた構成上の工夫です。序盤は一見お互いに無関係に思えた登場人物たちが、特にトゥルーエンドで綺麗に結びついた時には、心底感心しました。また、志乃の心残りを解消するという方向へ向かうかと思いきや……。よくある幽霊ものの隙間を突いて読み手の予想外の展開をした上で、更にラストではそこから来る予想の、更に一段上を行く。大変よくできた構成でした。

登場人物については、隠された繋がりについての伏線が中盤までに張られているという訳ではありませんので、少し唐突な感じを受けなくもありません。しかしそれを逆用して、各々のエンディング分岐で人間関係や、過去の事件の真実すらも変わるという面白さがありました。また、尺が長い物語でもありませんので、これくらいならば許容範囲だと感じました。尺の短さを上手く利用した仕掛けであるとも言えます(でも、志乃が主人公を慕う理由くらいは入れても良かったかも知れませんね)。

逆に言えば、分岐にこだわらなければ、より緻密に前半から伏線を出せたような気もしますが(志乃の正体についてとか色々)それはどちらを取るかという問題でしょうし、このままでも十分魅力的な物語です。何よりエンド分岐の面白さは、最近ではなかなか見られないタイプのものでした。単なる「何も明らかにならずに死んで終わるだけのバッドエンド」ではなく、バッドエンドにはバッドエンドなりの真実があるのです。こういう作りも見事でした。

文章力はかなり高いと思います。ところどころ捻りすぎと思える描写もありますが、主人公が国語教師という設定にしているのは上手いなと思わされました。レイアウトの関係で読み辛さがあるものの、文章は読み応えと読み易さを両立した、レベルの高いものです。ただ「若くして夭折」という表現は気になりました。「夭折」は「若くして亡くなること」なのですから、重複表現なのでは。まあ重複表現も修辞技法の一つとして使われることもありますが、このレベルの(しっかりした)文章にいきなりこの表現が来ると、ちょっと違和感がありました(あと、「(人が)墜落する」にも少し違和感が。間違いではないものの、話し言葉としてはちょっと合わないような。「転落する」じゃ駄目だったんでしょうか?)。

ツールはティラノスクリプト(ティラノビルダー)。エンディングは、バッドエンドが2つ、ノーマルエンドとトゥルーエンドで合計4つ。トゥルーエンド以外は最後の選択肢だけで分岐するので難しくありませんが、トゥルーエンドは全ての選択肢を正解する必要があるので、少し難しいかも知れません。トゥルーエンドのためには、現実を見るのが大事かも? 凝った構成とラストのすっきりとしたどんでん返しが気持ちいい、短編の良作だと思います。とっつきは良くないかも知れませんが、このラストは是非味わうべきです。キャラクターも魅力的で、トゥルーエンドでの志乃と夜のやり取りは微笑ましくなりました。是非読んでみてください。
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