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第781回/女心は上の空 - 死神少女とキスの詩(電子式遊戯開発研究所)

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死神少女とキスの詩

死神少女とキスの詩■制作者/電子式遊戯開発研究所(ダウンロード
■ジャンル/死神ツンデレ少女との1週間ノベル
■プレイ時間/1時間15分

普通の高校生如月彰人は、ある日学校の屋上でいきなり幼馴染の犬山透理に唇を奪われてしまう。呆然としている彰人に透理は、実は自分は死神の力を持っていて、今のキスで彰人に呪いをかけたと言う。その呪いとは、キスしてから1週間で相手を呪い殺すという驚くべきものだった。こうして、彰人のちょっと変わった1週間が幕を開けた。

ここが○

  • 個性的で面白いキャラクター達。
  • 実はストレートな恋愛ものだが、変わった設定で興味深く読める。
  • オープニングやエンディングが豪華。

ここが×

  • キャラクターを十分生かし切れていない。
  • 死神の設定も少し持て余し気味。
  • 選択肢でセーブできないのが不便。

■女心は上の空

前回のレビューで、「このところ人が死ぬ話ばかり」と書いたのですが、ならばと人が死なない話を探してきました。実はバッドエンドで主人公が死んでしまいますが(笑)、まあそれくらいは対象外ということで。物語のあらすじ説明が独特で、まず第一印象で目をひきました。幼馴染が実は死神。なかなかとんでもない設定です。これはちょっと読んでみたいと思いませんか?

「死神もの」と言えばすぐに思いつくのは「Dear ∽ Life」ですし、他にも「明けない夜が来る前に」や「あの夏祭りで誰が死ぬ?」「たとえ明日が晴れなくても。」など、結構あります。が、死神ものの多くは、主人公に余命を宣告するだけで、直接命を奪う訳ではない場合がほとんどです。もちろん、魂を狩るなどの描写がなされることもありますが、それは命の火のいわば「後始末」をしており、能動的に命を奪っている訳ではありません。

死神少女とキスの詩ところがこの作品は、主人公如月彰人の幼馴染でありヒロインである、犬山透理が直々に主人公を呪い殺そうとします(汗)。その呪いの手段が、相手の唇を奪うこと。冒頭いきなりキスシーンから始まる物語というのも珍しいですね。アニメその他ではあった気もしますが、フリーノベルではちょっと記憶にありません。冒頭がいきなり刺激的で、読者の心を鷲掴みです(笑)。

しかもこの透理、作中の描写を見る限り、ほとんど彰人と一緒に暮らしているも同然です。なんて美味しい男なんでしょうか(笑)。が、彰人は透理にキスされたことで、右肩に刺青のような紋章が浮き出てしまいます。その紋章には、中心部に数字が「7」と書かれており、これは呪いが発動して彰人が死んでしまうまでのタイムリミットを示しています。残り7日という訳ですね。この通り、出だしは突拍子のなさもあるものの(何故幼馴染が死神?)、強烈なインパクトがあり、読者をしっかり物語に引き込んでくれます。

キャラクターがまた個性豊かですね。ツンデレヒロインの透理に、学校をサボってばかりの秀一、スキンヘッド仏教男の礼司に、ちびっ子巫女のざくろ、そしてクラスのアイドル的存在の謡。特にざくろと礼司のキャラクターが強烈。作品全体を一貫していた、非常に賑やかで楽しげな雰囲気は、この2人によるところが大きいと思いました。個性豊かだけでなく、キャラの組み合わせが面白く、笑える台詞も随所に用意されていました。ラブコメとしても大変楽しめる物語です。

ただ、ラブコメ要素が強過ぎて、本来のテーマである「呪いと死神」の要素がちょっと霞んでしまった感があります。序盤こそ緊迫したムードもあるのですが、翌日からはあと数日で呪いが発動するなんてことはまるでなかったかのように、普通の学園描写が続きます。もう少し緊迫感も織り交ぜた展開にした方が、話に深みが出たのではないでしょうか。せめて、1日の最後に右肩の紋章の数字が1つずつ減っていく、というような演出を入れるだけでも、ちょっと違った気がします。

また、透理が死神の血を引くという設定が、作中で十分説明されていない上、ラストがそこにしっかり絡んだ展開になるため、ラストで少し置いてけぼりを食らったような感覚になりました。リアルにしろとか、透理の力の由来を事細かに説明しろというのではなく、少しそこに説得力を持たせるような描写が欲しかったところです。1つ2つ過去のエピソードを交えるなどすれば、印象が変わったのではないでしょうか。

と気になる点はあるものの、キャラクタードラマとして非常に楽しめる物語です。鈍過ぎる主人公にやきもきしたり、ざくろと礼司のやり取りに笑ったり、ラブコメらしく読み手の感情を揺さぶってくれます。礼司がせっかく面白いキャラクターなのに後半消えてしまったりもしていますが、軽いだけの男かと思われていた秀一に後半意外な見せ場があったり、謡が健気だったり、とにかくキャラクターは全員魅力的で素敵です。礼司は立場上、ざくろと絡ませてみれば面白かった気がしますね。タイトル、1枚絵、立ち絵で絵師さんが違うせいか、違和感は感じたものの、どの絵も綺麗で魅力的です。

なお選択肢が1箇所だけあるのですが、選択肢に来るとセーブできません。まさかそんなことになるとは思わなかったので、最初にプレイした時は罠にはまった思い出した(笑)。メニューにもスキップはありませんが、ctrlキーでスキップができますからそれを使いましょう。ラストは典型的な「素直になれない幼馴染もの」のオチですが、エピローグで見せつけてくれる2人のバカップルぶりが微笑ましく、最後まで楽しめました。

ツールは謎です。どこにも明記されていません。プレイ感覚は快適で、特に問題はありません。マウスホイールの上回転で読み返しができませんが、カーソルキーの上で読み返せます。選択肢は上で書いたように1箇所で、間違うとバッドエンド直行です。プレイ時間は1時間ちょっとくらい。主人公以外のメインキャラにはみんな声がついています。好演ですが、ざくろだけは若干棒読み感が(汗)。慣れるとそれも彼女の性格に合っているように聞こえてきましたけど。とにかく、設定からちょっとダークな物語かと思っていたら、割と普通のラブコメなのですが、とにかくキャラクターが面白いですので、それを楽しむためだけにプレイしても、損はしないと思いますよ。
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