第783回/思い出は時空の彼方へ - イービルウィッチ2(ハコノネコ) - SF
FC2ブログ

NaGISA net - フリーノベルゲームレビュー

ARTICLE PAGE

作品リスト(通常) - 新着順名前順プレイ時間順ジャンル別
作品リスト(掌編) - 新着順名前順ジャンル別
Peing質問箱(リクエスト、ご質問お気軽に)

第783回/思い出は時空の彼方へ - イービルウィッチ2(ハコノネコ)

SF
  • comment0
  • trackback-

イービルウィッチ2

イービルウィッチ2準推薦
■制作者/ハコノネコ(ダウンロード
■ジャンル/神話風SFアクションADV
■プレイ時間/40分

特殊能力を持つ十槍あかねは、クオスタワーで起きた事件のために呼び出された。ヘクセンベーゼン社が極秘に研究したいた「レンのガラス」を破壊するため、猫の姿の相棒ニャテップ、妹のやよいと共に任務遂行に当たる。クオスタワーに急行した一行は事件現場となった57階に向かうが、この世のものとは思えない怪物、ショゴスが待ち受けていた。

ここが○

  • SF要素と神話要素が無理なく融合した魅力的な世界観。
  • 緊迫感とテンポを両立した展開。
  • 単なる勧善懲悪でない、心温まる内容。

ここが×

  • 謎解きが意外とハード。
  • 無音のシーンが多い。
  • 少し世界観を理解しにくいところが。

■思い出は時空の彼方へ

ティラノゲームフェス2019が終わったようです。これからしばらくは、「受賞しなかったものの、見落とされるには惜しい良作」を中心にご紹介していく予定です。コンテストの意義は十分尊重しますが、コンテストって「優れた作品をより広める」効果があると同時に、「受賞しなかった作品を切り落とす」作業でもあるんですよね。僭越ながら、私みたいな零細個人レビュアーが、少しでもそういう作品を拾い上げていければ。

さてこの作品は、タイトルからもお分かりのように「イービルウィッチ」の続編です。不思議な力を持つ主人公、十槍(じっそう)あかねが、その力を活用して事件を解決していくというシリーズ。前作はミステリー風味でしたが、今回はSFです。しかしさほど違和感がなく、神話風の世界観にSFが無理なくマッチしています。世界観は少し理解しにくいところがなくもないですが、世界観が十分理解できなくても楽しめますので、別段問題はないと思います。

イービルウィッチ2舞台はクオスタワーと呼ばれる超高層ビル。そこに入っているヘクセンベーゼン社は、極秘に「レンのガラス」の研究をしていました。これは異世界の風景を映し出し、それだけでなく異世界へと繋がるワームホールにもなる、ある意味非常に危険なアイテムです。そして、そのビルに怪物が現れます。怪物の駆除と、レンのガラスの破壊という任務を帯び、あかねは妹のやよい、相棒のニャテップと共にクオスタワーに乗り込みます。

この導入部は、少し説明的過ぎるところはあるものの、これから先への期待感をいい具合に高めてくれる、いいオープニングです。上の画面写真にもある、あかねが着替えるシーンは、序盤の一場面なのですが、ここはカットが1つ1つ少しずつ現れるという演出がいいですね。この場面に限らず、漫画風の構図、カット割りの演出が要所で非常に印象的に効いていました。

さて序盤はショゴスという怪物との戦闘があるのですが、単なる戦闘ものかと思いきや、そこに色々と味付けがされています。逃げ遅れたヘクセンベーゼンの技術者エリカ、それにレンのガラスでこちらにやってきた少女。彼女たちが関わってきて、短編作品ではあるのですが、物語全体が立体的な構造を持っています。加えて、単純な「悪をやっつける」ではない、ちょっと心温まるシナリオになっている辺り、よくできた構成ですね。

特に、異世界の少女はもちろんなのですが、エリカや、更に「悪役」であるはずのショゴスにまでも、しっかりと物語上の役割を持たせているため、ラストの収まりが非常に綺麗でした。非常に考えて作られた構成の物語だと思いました。また、シリアスなシーンと緩めるシーンのバランスも良かったですね。ニャテップも相変わらずでしたし、ビル内の休息シーンもいいアクセントでした(それが後の謎解きの伏線になっているのが、また巧み)。

ただ、無音のシーンが多いのが個人的には気になりました。まあ、一見ライトなようでいて実は硬派なところもある物語の雰囲気的には、それでも合っていた気はするのですが、盛り上がる場面ではもう少し曲を入れたり、あるいは効果音に凝ってみれば、より効果的だったような気がしました。ここらは読む側の好みも絡みますので、何とも言えないところではありますが。

前作同様、何箇所かではプレイヤーの判断で謎解きを求められます。違和感のあるところをクリックする必要があったり、あるいは単語入力だったり。間違えてもヒントが出るわけでもないのは前作同様ですので、少し苦労するかも知れません。最初の「間違い探し」はいきなり来たため全く分からず、そこでセーブしてもう一度最初からやり直しました。セーブ画面に出るサムネイルが、意外とヒントになるかも知れません。他の箇所はそこまで難しくないですが、ひらめきが必要な謎もあります。少しヒントがあれば親切でしたね。

ツールはティラノスクリプトです。ゲームオーバーはありますが、分岐はなく、プレイ時間は40分程度。謎解きで迷わなければもっと短いでしょうが、迷わずに一発クリアできればかなりの謎解き職人だと思います(?)。キャラクターがよく立っていて、短いながら起承転結、盛り上げどころがとてもよくできています。また、ただの謎解きゲームに終わらない奥の深さも併せ持っています。前作を楽しんだ方も、前作をプレイしたことのない方も、プレイして損のない一作です。クトゥルフ神話が全然分からなくても心配はありませんよ(笑)。
関連記事

Comments 0

Leave a reply