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第784回/この星空を忘れない - 今日、真夏の星を、愛衣と(星見ヶ丘学園ゲーム部)

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今日、真夏の星を、愛衣と

今日、真夏の星を、愛衣と準推薦
■制作者/星見ヶ丘学園ゲーム部(ダウンロード
■ジャンル/夢と現実行ったり来たり恋愛ノベル
■プレイ時間/4時間

双水准は私立星見ヶ丘学園に通う高校生。憧れの女生徒、早乙女愛衣にお近づきになるため、必死に勉強して何とか特待生の資格を勝ち取った。特待生寮に入り、頼りになる先輩の佐倉織音の助力も得て、これから愛衣と仲良くなれるはずと期待に胸を膨らませるが、彼には眠った時他人の夢に入れるという特技があった。夢と現実が交錯する学園恋愛ノベル。

ここが○

  • 夢に入れるという設定が生かされたストーリー。
  • 女性キャラがみんな魅力的。
  • 特に今日華ルートの後半が、情緒に訴える見事な出来栄え。

ここが×

  • 癖が強すぎ、「読ませる」文章としては少々きつい。
  • シナリオや立ち絵にかなりばらつきがある。
  • 全体に伏線の活用がやや不十分。

■この星空を忘れない

過去何度かVIP系の作品を取り上げましたが、この作品もどうやらVIP系の様子です。VIP系の作品は、独特のノリを前面に押し出している作品と、そうでもない作品がありますが、この作品は明らかに前者。文章が独特で、良く言えばハイテンポで楽しく読めます。タイトルが独特ですが、これは3人のヒロインの名前を盛り込んでいるんですね。途中で気付きました。

主人公双水准は私立星見ヶ丘学園に通う高校生。実は彼には密かに憧れている女生徒がいました。名前は早乙女愛衣(めい。ちょっと読めませんね……)。彼女は特待生なのですが、極端に体が弱いため滅多に学校に来られません。そのため、何とか愛衣とお近づきになりたい准は、死に物狂いで勉強して特待生試験に合格し、晴れて特待生寮に入ることができるようになりました。ただその准が、全然特待生らしくないのですが(笑)。

今日、真夏の星を、愛衣とそんな准には、眠った時に他人の夢に入り込める(手出しを出せずに見ているだけという状況も多いですが)。という特技があります。今作はそんな准の特技を生かした作りになっています。右下のアイコンにご注目。普段はヒロインの好感度を見られるのですが、特定のタイミング(文字色が変わるので分かります)でこれをクリックすると、ヒロインの夢に入り込むことができます。もちろん入らないという選択肢もあり。これはなかなか面白い仕掛けですね。

ヒロインは3人です。メインヒロインの愛衣は病弱系。雨宮夏姫は陸上部に所属する、ポニーテールの幼馴染。二俣今日華はある日突然校門前で主人公に告白してきた中等部の女の子。性格分けはしっかりしており、この3人に加え、さらに寮長(名前不詳。立ち絵もシルエットだがいいキャラ)や、主人公をサポートしてくれる先輩の佐倉織音を巻き込んで、話が進んでいきます。

気になる点を先に書きますが、この作品は文章にかなり癖があります。VIPらしいと言えばらしいのですが、いくら高校生の一人称の物語とは言え「読ませる」文章としては、地の文が崩れすぎの感がありました。「めっちゃ」が一画面に3回も4回も出てきたときは、流石に「一人称とは言え、書き言葉としてはどうなのだろう」と感じました。他にも、若者言葉が連発されて、その都度検索で調べる私(笑)。「一人称の書き言葉」と「話し言葉」はイコールではありませんから、もう少し書き言葉らしいリファインが欲しかったように思いました。

さて、3人のルートです。幼馴染の夏姫ルートは、幼馴染ものとしては定番とも言える展開ですが、「夢に入れる」という准の特技を上手く生かした展開です。さほど捻ったところのない展開ですが、逆に安心して読める物語でもあります。ただ、過去の夏姫の体験、准との思い出については、それとなく語られるだけで明確に描写はされませんので、若干隔靴掻痒の感はありました。もう少しそこは前面に押し出してもよかったのではないでしょうか。

メインヒロインの愛衣ルート。タイトル通り「星」が重要なファクターとなっているシナリオです。病弱系ヒロインなのですが、あまりそこを押し出していません。このルートも、愛衣の病気についてもう少ししっかり描いて欲しかったように思いました。あとは、愛衣がいつの間にか准に嫉妬するまでになってしまっていたのですが、その過程もあまり書かれていませんので、その意味では物足りなさも残ります。しかし、織音を絡ませたラストの展開は、この手の展開をする物語の中ではかなり良くできていました。愛衣の病気について、もう少し前半からしっかり伏線を張っていれば文句なしでしたね。

そして私一押しのヒロインが今日華。前日の記憶がなく、1日ごとに雰囲気が変わるという謎で、序盤から上手く引き付けてくれましたし、クライマックスの展開が非常に胸に響きます。そこまで意外な真相という訳ではないのですが、見せ方が非常に上手い(医学的には荒唐無稽な設定ですけど)。このルートももう少し前半から伏線というか仕込みが欲しかったようには思いましたが、ラストシーンも非常に美しく感動的。このルートを読むためだけにプレイしても、十分お釣りが来ると言っても過言ではありません。

全体に、どのルートも伏線が少し不足気味に感じ、構成にひと工夫があればとは思ったのですが、夢でヒロインの隠された気持ちを比喩的に探るという設定が面白く、単なる「好感度を上げるだけ」の恋愛ものに終わっていないところが面白い作品です。立ち絵もシナリオも複数の人による分業のようで、統一感には欠けるところもありますが、逆にそのごった煮感を楽しめる作品でもあります。

ツールはティラノスクリプト。文章は全画面ウィンドウで、やはり文字表示が横に長く、ずっと読んでいると少し疲れるのは気になりましたが、個性的なキャラクターの軽妙なやり取りの中で、しっかりした物語性を盛り込まれた作品です。3人のルートを全部読んで4時間弱というところでしょう。ボリュームのあるマルチヒロインの恋愛ものは最近珍しいですから貴重です。最後に一言。「織音ルートが欲しかった!」と声を大にして表明しておきます(笑)。
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