第785回/とろける砂糖と解ける謎 - IQ180でパティシエールですが!?(Masaki MATSUMOTO) - ミステリー・サスペンス
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第785回/とろける砂糖と解ける謎 - IQ180でパティシエールですが!?(Masaki MATSUMOTO)

ミステリー・サスペンス
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IQ180でパティシエールですが!?

IQ180でパティシエールですが!?■制作者/Masaki MATSUMOTO(ダウンロード
■ジャンル/お菓子職人の日常謎解きノベル
■プレイ時間/25分

IQ180の才媛朝霧玲央奈は、「ショコラティエ・アメイジンググレイス」という店の洋菓子職人。何をやらせても抜群の才能を発揮し、人呼んで「レディ・ダ・ヴィンチ」の異名をとっていた。そんな彼女のもとにある日、味噌職人の菊川から持ち込まれた奇妙な謎。玲央奈は、プロ棋士の佐藤桂太と共にこの謎に挑む。気軽に読める日常系ミステリー。

ここが○

  • 手軽に日常の謎解きを楽しめる。
  • 特徴がはっきりした玲央奈と桂太という2人のキャラ。
  • 短いが謎解きものとして手がかりの提示などがしっかりしている。

ここが×

  • 少しプレイヤーに能動的に謎解きに関わらせても良かったのでは。
  • キャラクターの設定が物語に生かされているとは言い難い。
  • 文章読み返しができないのは不便。

■とろける砂糖と解ける謎

今回は短めの作品。30分以内の作品は意外と久々ですね。最近は、15分以内の掌編が一番作品数が多いようですが、やはり私はそれなりに読み応えがある作品が好きです。しかしやはり時には短い作品で軽く楽しむのもいいものです。この作品は、日常系ミステリーです。ミステリーは、物語としても成立させた一方で、謎解き要素も破綻なくまとめないといけませんから、短編だとなかなかハードルが高いジャンルです。

この作品の主人公は、朝霧玲央奈という少女。彼女はIQ180という才媛で、若くして博士号をとったり多いに各方面に才能を発揮。そのため名前をもじって、通称「レディ・ダ・ヴィンチ」と呼ばれています。「レオナルド」と「玲央奈」を引っ掛けたということでしょうね。そんな彼女ですが、何故かお菓子作りに魅せられて、今では「アメイジング・グレイス」という店でケーキ作りに励むパティシエール(女性の洋菓子職人)。彼女のケーキは瞬く間に評判を呼び、店はいつも大繁盛しているのでした。

IQ180でパティシエールですが!?そんな玲央奈の店に時々やって来るのが、もう一人の主人公佐藤桂太。彼は22才のプロ棋士ですが、なかなか芽が出ず苦戦しています(「最下級のB2」とありましたが、実際のプロ棋士の一番下のクラスはC2です。22才でB2組ならば、おそらく将来の名人候補かと)。玲央奈が桂太を将棋でコテンパンにやっつけるとありますが、いくらIQ180でも、現代将棋はかなり本格的に勉強しないと、プロ棋士に勝てるものではない気がしますが、そこはフィクションだからということで。

さて、玲央奈の元に菊川慎朗という味噌職人の男性がやってきて、彼の周りで起こった奇妙な出来事の相談にやってきました。菊川は世界文化純保存財団(胡散臭そうな名前……)という団体から、毎日数時間の過去の文献の筆写を頼まれたらしいのですが、それだけの仕事で週に30万円もの報酬が支払われているんだとか。流石に怪しさを感じた菊川。とこれを読むと、ある程度鋭い方ならば似たようなお話が頭に思い浮かぶことでしょう。「シャーロック・ホームズの冒険」の「赤毛連盟」です。

あのお話を知っている人ならば、色々とぴんと来るところがあるでしょう。ノベルゲームコレクションの作品ページのタグに「ホームズ」「アレンジ」とあるので、恐らくあの話を元にしたと思われます。ま、ホームズ譚とは舞台もキャラクターも違いますので、「赤毛連盟」を知っていても、問題なく楽しめます。知っていれば知っていたで、似たところや違うところを確認してみるのも、面白いかも知れません。このお話、物語も音楽も絵も、全部作者さんが1人で作られたそうです。絵までなら自分で描く方も結構いらっしゃいますが、音楽まで自作というのは凄いですね。

短編ミステリーだと、途中で手がかりの提示が不十分だと、いくら謎解き部分をしっかり書いても、びっくり箱的な驚き以上のものは感じられないのですが、この作品は途中での手がかり提示がしっかりしており、最後それを1つ1つ玲央奈が解明していくところに、なかなかの爽快感を感じられました。「赤毛連盟」を知っていれば、話の先を読めてしまうところはあるのですが、起こった事件の風変わりさと、独特のキャラクターでしっかり話を引っ張ってくれます。

ただ、その魅力的なキャラクターの設定が、物語に十分生かされているとは言い難いところがあります。玲央奈のパティシエールという設定や、桂太のプロ棋士であるという設定を、もう少し作中で生かしてみても良かったのでは(玲央奈に関しては、少しそれを生かした場面も見られますが)。短編謎解きとしてはよくできていますが、全体の印象は「玲央奈と桂太の顔見せ」という感じです。もしかしたら、続編の予定があるのかも知れませんね。登場人物の2人は、そう思わせてくれるような魅力がありました。

この作品、フォントがかなり大きめです。最近はウィンドウの大型化が進む一方で、フォントは何故かだんだん小さくなっていく傾向にあるのですが(なので1行に入る文字数の多いこと)、これくらいであればまずまず快適です。ただ横幅はまだ長いように感じるので、テキストウィンドウの左右はもう少し切っても良かったのではないでしょうか。それとこの作品は、謎解きものなのに文章の読み返しができません。これはちょっと参りました。

ツールはティラノスクリプトです。プレイ時間は30分かからないくらい。選択肢はありません。日常謎解きものとして面白い物語ですので、少しプレイヤーに能動的に謎を解かせる箇所があっても面白かったかも知れませんが、作者さんの処女作のようですし、よくできたキャラクターで次回作への期待を感じさせるには十分な内容です(タイトルが「ティラノスクリプト解説」になっているのはご愛敬)。レディ・ダ・ヴィンチと桂太の新たなる活躍を楽しみに待ちたいと思います。
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