第790回/残り5秒のインスピレーション - FOUL 5(りょーへいかい) - 学園・青春
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第790回/残り5秒のインスピレーション - FOUL 5(りょーへいかい)

学園・青春
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FOUL 5

FOUL 5■制作者/りょーへいかい(ダウンロード
■ジャンル/離島のバスケ青春ノベル
■プレイ時間/2時間

離島の私立椿奈高校に通う女子高生、木崎姫歌。ある日担任から、不祥事で人がいなくなった男子バスケットボール部の立て直しを命じられる。姫歌は渋々1人また1人とちょっと変わった部員を集め始めた。個性派揃いの男子バスケ部を、姫歌はまとめられるのか。そして姫歌に隠された過去とは? 凝った演出と独特のぶっ飛んだノリが凄い青春物語。

ここが○

  • スクロールなど、ワイド画面を生かし動と静を織り交ぜた演出。
  • ぼかしを上手く使った、奥行きを感じさせるレイアウト。
  • 臨場感のあるバスケシーンと後半の展開。

ここが×

  • 凄すぎるノリ、濃いキャラにはついていけない人がいるかも。
  • キャラクターの数が多すぎるような。
  • それまでの盛り上がりから一転、あまりにも突然終わってしまう。

■残り5秒のインスピレーション

前回のレビューで書いたように、最近新作でいまいちこれといった作品に出会えませんので、また過去にレビューした作品の作者さんの作品を中心に探しています。この作品は、「PARANOIA PARADISE」を作られた作者さんによるものです。前作は、とにかく物凄い設定のキャラクターが多数登場し、終始ぶっ飛んだやり取りを繰り広げながら、根底にはシリアスなドラマが潜んでいる、そんな物語でした。

そして今作も、基本的な作品の雰囲気は共通です。前作ほどではないものの、かなり極端な性格の登場人物が多数登場します。まあ、前作は自称神とか、自称マリー・アントワネットの生まれ変わりとか、かなりめちゃくちゃなキャラクターばかりでしたが、それに比べると今作のキャラはまともです。とは言え前作と比べてのことで、普通の観点からすれば十分にとんでもないキャラクター達ですが(笑)。

FOUL 5冒頭から普通ではありません。主人公の木崎姫歌は、離島の私立椿奈(はるな)高校に通う、ごく普通の女子高生……かと思いきや、いきなり男子小学生をストーキングしているシーンから物語が始まります(笑)。しかも、ほとんど同じシーンが二度繰り返されます。こういう「繰り返しで笑いをとる」というのは難しく、上手くやらないとただ冗長なだけになってしまいかねませんが、この作品はそこらのセンスが非常に優れており、こういうのが上滑りしていません。

そして担任教師の家康からの要請で、何故か男子バスケットボール部の立て直しをすることになった姫歌は、部員集めを始めます。その部員というのがまた個性派揃い。ブラコンの相羽吾蓮(あいば・あれん)、ナルシストの甲尾莱亜(こうび・らいあ)、そしてマゾヒストの宅野美月(たくの・みつき)。バスケ経験は全員ゼロ。しかも全員名前が読み辛い(笑)。このメンバーに加え、個性では負けず劣らずのクラスメイトも絡んできて、騒がしい離島のバスケ部が始動する、そんな物語です。

とにかく登場キャラクターの癖が強く、ここは好みが分かれるところかも知れません。またそのキャラのやりとりが濃いので、苦手な人は途中でついていけなくなる恐れもあります。しかし、作者さんのセンスのなせる技か、その濃いキャラのやりとりが「滑って」いません(こういうのが滑ると、結構大変なことになります(汗))。また、緊張と弛緩のバランスが上手く、緩めたところでとても上手く笑いを取りにきます。こういうのを見極める眼力は、大したものだと思いました。

ただ、登場キャラクターの数がかなり多衣のですが、その全員が十分生かされているとは言い難いところがあります。もう少し登場人物の数を絞っても良かったように思いました。まあ、登場キャラが多いと言っても、全員しっかりキャラは立っており、どのキャラも埋没したり、途中で消えたりしていないですし(でも、御傘屋麻や相羽尊は途中で完全に消えてしまいましたが)、またキャラが多いのに物語がぶれたりもしていないところは流石だなと思わされるのですが。

この作品は見ての通りワイド画面です。ワイド画面の作品でワイドが生かされているなと思うことはほとんどなく、逆にワイド故のデメリットが目立つ作品の方が多いのですが、この作品はワイドならではの演出や配慮がされており、感心しました。スクロールを使って横方向の動きを使う「動」の演出だけでなく、手前のキャラクターをぼかす「静」の演出では画面に奥行きを感じさせてくれています。また、文字表示領域は中央寄りの部分に限られており、異様に視線が移動して疲れることもありません。ワイドならではのメリットを感じさせてくれる、珍しい作品です。

物語は後半で、バスケの試合での対決となり、この場面は非常に盛り上がります。動きを使った演出も冴え渡っている上に、文章による描写もテンポがよくリアリティもあり、後半の展開としては理想的です。キャラクタードラマとしても、この辺りは男子バスケ部員や九手いくるを始めとする女子バスケ部員も非常に魅力的に描かれており、この場面だけでも十分楽しめると言ってもいいくらいです。

が、終わり方があまりに突然で、エンディングクレジットが流れ始めた時はしばらく呆然としてしまいました。確かにあそこは話が一区切りつくタイミングではありますが、それにしてももう少し綺麗なまとめ方は無かったものでしょうか。しかも、いきなり丈太の秘密が明らかになり、直後に終わってしまうので、「それ必要!?」と考え込んでしまいました。これだけは残念に感じた点です。無難に綺麗なラストをつけてくれていればと思わずにはおれません。ラストの対決の意義とその結果を明確に描くだけでも、かなり違ったと思うのですが。

それでも、非常にレベルの高い演出と個性的なキャラクターで、やり取りもドラマも楽しめる物語でした。ツールは吉里吉里です。選択肢はなく、プレイ時間は2時間前後です。ラストがいきなり終わるのは、もしかしたら続編の予定があったのかも知れませんが、この作品が出てもう6年ですから、それは難しいのかも知れません。しかしもし出るなら絶対に続きを読んでみたいと思わせてくれた作品です。ノリのいい学園キャラクタードラマが読んでみたい方にお薦めします。特に演出には唸らされること間違いなしです。
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Comments 4

ゲーマーのMY  
おもしろそう

はじめまして!ノベルゲームって音楽があるから雰囲気って大事ですね。BGMが悪かったり、場面とあってないかなと思うものだとちょっと苦しい。これはでも良作かなと思いますよ。ホント。なんで人気、話題にならないのかと不思議ですね。ラノベは人気があるのに。ノベルゲームはなぜ?って感じでしょうか。迷惑でしたかね、失礼しました。

2020/03/09 (Mon) 11:56 | EDIT | REPLY |   
NaGISA  
>>ゲーマーのMYさん

初めまして。コメントありがとうございます。

ノベルゲームにおける音楽の働きは、おっしゃる通りとても大きいと思います(もちろん、シナリオが一番大事ではありますが)。この作品は、優れた演出、少し極端ではあるものの見事なキャラクターメイキング、そしてバランスとテンポに優れたストーリーで、大変楽しめる作品でした(オチの付け方だけが惜しまれます)。

ノベルゲームは、今は確かに昔に比べるとダウンロード数などは少ないですね。動画やweb小説など、色々な選択肢が増えたということなのでしょう。

全然迷惑ではありませんので、また気軽にコメントをお寄せください。

2020/03/10 (Tue) 23:12 | EDIT | REPLY |   
ゲーマーのMY  
返信してくれてありがとう

まさか返信くれるとは!遅れましたがありがとう。ラノベの評価向上のためにも。アドベンチャーだと期待と少し違うかなと思うんですが、ノベルゲームとなると雰囲気を大事にしていていいなと思いますね。普及活動したい。

2020/03/19 (Thu) 10:27 | EDIT | REPLY |   
NaGISA  
>>ゲーマーのMYさん

いえいえどういたしまして。私のレビューを参考にして、色々なノベルゲームを楽しんでいただければ、とても嬉しいです。

2020/03/23 (Mon) 23:43 | EDIT | REPLY |   

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