第792回/君と出会って別れる真夜中 - 真夜中のお散歩(ユウ) - ホラー
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第792回/君と出会って別れる真夜中 - 真夜中のお散歩(ユウ)

ホラー
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真夜中のお散歩

真夜中のお散歩■制作者/ユウ(ダウンロード
■ジャンル/夜のお散歩オカルトノベル
■プレイ時間/25分

自分の家があまり好きではない少女、ゆめ。夜は寂しいのに、母親はおやすみの声をかけるだけで、一緒に寝てくれることもない。そんなゆめは、近くの空き地にいる猫又と、夜の散歩に出かけることにした。出かけた先で見るのは、見たこともない妖怪や、不思議な出来事。さて今夜は、果たしてどんな変なものと出会うのか。ホラー風味の不思議な短編物語。

ここが○

  • デザインなどのセンスがオリジナリティがありクール。
  • 異常な物語を軽く読ませる描き方。
  • おまけの怪奇ファイルが楽しい。

ここが×

  • よく考えると酷いオチなので、読む人を選ぶかも。
  • 読み返しができない上、読み返そうとすると強制的に文章が送られてしまう。
  • 音楽がほとんどないのは少し寂しい。

■君と出会って別れる真夜中

最近旧作のレビューが多かったのですが、今回は新作です。旧作には旧作なりの、新作には新作なりの良さがありますから、どちらが上ということもないのですが(新作だって月日が経てば旧作になりますし)、新しい作品には、色々と面白いセンスの作品も多く、旧作にはない楽しみ方ができます。この作品も、他ではなかなか見られないセンスが光っています。

この物語は、ジャンルで分類すればホラーということになるのでしょうが(色々とお馴染みのお化けやら妖怪も出てきますから)、しかしあまりホラーという感じはありません。まず、ホラーなのに読み手を怖がらせにきていません。演出で怖がらせようと思えばいくらでも怖い話にもできたでしょうに、あえてあっさりと淡々と描写しているように見えます。そしてそれが、この物語独特の味わいを生んでいるところが面白いですね。

真夜中のお散歩主人公の名前は、ゆめ。小学生の女の子です。彼女は自宅があまり好きではありません。母親は優しいのですが、寂しい夜一緒に寝てくれることもありません。そこでゆめは、夜の散歩に出かけることにしました。いつもの空き地で出会った猫又と、あてもなく夜の街をさまよいます。行った先では、妙な妖怪に出会ったり、賽の河原で石を積み上げる子供がいたり、よく分からない出来事が起こります。そんな散歩がしばらく毎晩続きますが……。

まず開始してすぐ目に付くのが、独特のデザインです。背景は真っ黒。そこにはっきりしたシンプルな線のキャラクター。絵柄自体は可愛いのですが、目とリボンだけが赤いゆめなど、独特の「普通じゃない感じ」を上手く表現できていると思います。また、デザインが極限までシンプルなため、それが読者の想像力を高めてくれています。散歩先で出会う妖怪の類には、全然絵はないのですが、読んでいるとそれを感じさせません。この辺りの構成の上手さには、作者さんのセンスを感じました。

物語は、ゆめが猫又と散歩して、怪奇現象と出会うだけというのを第一夜から第四夜まで繰り返し、最終夜で秘密が明らかになる、という作りです。そうして最終夜まで行くと、今度は「おねえちゃんの話」が読めるようになり、こちらも第一夜から最終夜まであります。それぞれの話は非常に短く、特におねえちゃんの話は最終夜まであっという間ですので、気軽に読み進められます。

「ゆめの話」でも「おねえちゃんの話」でも、最終夜でつくオチはかなりとんでもなく、読み終えて「いいのかそれで!?」と思ってしまいました。これをまともに描写すれば、かなり陰鬱な終わり方です。しかし演出や文章、描写が軽くさっぱりしており、暗さを感じさせません。むしろある意味でのコミカルささえ感じさせます。この、「上手い外し方」には唸ってしまいました。こういうのは、なかなか狙ってできるものではありません。

そうは言っても後味は全然良くないお話ですから、読み手は選ぶかも知れません。私自身も、好きな話かと言われれば、頷けませんし。ですが、そういうタイプの話を、見せ方と演出で極限まであっさり風味に仕上げ、誰でも軽く読める作品にしてあるのが凄いところ。またゆめの秘密や、猫又との関係など、この短さでも色々と謎を散りばめ、それがラストできちんと解けているので、ある意味読後感は良好です。

なお、1エピソードを読む度に「怪奇ファイル」に1つずつ読み物が追加され、作中に登場した(登場していないものも)妖怪や怪奇現象の解説が読めます。登場人物である「おねえちゃん」の独自解釈なのですが、これが結構楽しく読めました。本編とは関係ないと言えばないのですが、こういうおまけはいいですね。ただ、同じ話を2回読んでもファイルが1つ開いてしまうので、そこには調整が欲しかったですが。

ツールはティラノスクリプトです。絵の容量があまり大きくないせいなのか、起動速度もそこまで遅くはありません。BGMがエンディング以外にほとんどないのは寂しいのですが、効果音だけのスタイルがこの作品ならではの雰囲気を生み出しています。選択肢はなく、プレイ時間は「怪奇ファイル」まで全部読んで30分弱です。こういう味の作品に出会えるのは、フリーノベルゲームならではだなと、改めてその面白さを実感した次第です。
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