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第793回/君は空から僕を見てて - 桜の舞う頃に(あおぞら幼稚園)

不思議系
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桜の舞う頃に

桜の舞う頃に■制作者/あおぞら幼稚園(ダウンロード
■ジャンル/入学式の出会いと別れノベル
■プレイ時間/20分

今日は高校の入学式。長い受験生活を終え、今日から桜坂高校に通うことになる桜木裕紀は、初めての電車通学に、期待と不安を感じつつ通学電車に乗り込んだ。そこで目にした見知らぬ少女、川井恵理。ひょんなことから恵理の苦境を助けた裕紀は、実は彼女が同じ高校の入学生と知って驚く。桜の季節の、ちょっとした出会いと別れの物語。

ここが○

  • 絵を始めとして、全体に雰囲気がとても柔らかい。
  • ストレートながら整った作りのシナリオ。
  • ラストの心地よい収まりの良さ。

ここが×

  • 言葉の使い方など、文章力は今一つ。
  • ストレート過ぎるかも知れないシナリオ。
  • 状況伏線の使い方が不十分。

■君は空から僕を見てて

3月いっぱいは仕事が多忙につき、なかなか作品をプレイする余裕もありません。時間も取れないため、ちょっとした短編を読みたいなと思っても、新作を探すと5分や10分の作品が非常に多く、30分の作品を探すのも苦労します。なので、思い切り懐かしい作者さんの作品をプレイすることにしました。かつて一世を風靡した(?)「あおぞら幼稚園」の作品です。

おにあい」のようなぶっ飛んだ作品もありますが、むしろ正攻法でストレートな物語が売りの作者さんでした。時期的にも今がちょうどいいと思い、この作品を選んでみました。千円札を「夏目さん」と表現している辺りに、時代の流れを感じます(現行の野口英世の千円紙幣が発行されたのは2004年ですから、これが公開された時にはもう「野口さん」だったような気もするのですが)。

桜の舞う頃にあおぞら幼稚園の作品は、たくさん取り上げているようで、実は4作品しかレビューしていないんですよね。プレイはほとんどしているのですが、何せ公開ペースが早かった上に同じような展開の物語も多く、そうなるとレビューも同じようになってしまうということで、プレイした割にはレビューでご紹介はしていなかったのです。しかし、捻った作品が増えた今、逆にあおぞら幼稚園のような作風の作品は貴重です。これから少しずつ、今でもプレイできる作品をレビューしていくつもりです。

今作の主人公の名前は、桜木裕紀。今日から桜坂高校に入学する新一年生です。そんな彼が、初めて利用する通学電車の中で、何やら困った表情をしている少女の姿を見かけます。その少女、川井恵理を結果的に助けることになった裕紀ですが、恵理はなんとゆうきと同じく、桜坂高校の新入生なのでした。そして2人は再びその日の放課後、会うことになるのですが……。

この冒頭からもお分かりのように、典型的なボーイミーツガールタイプの物語です。最近では、これほど正攻法のボーイミーツガール型はめっきり少なくなりましたね。むしろ今こそ、口にトーストを加えて激走する通学途中に、美少女と激突する、なんて出だしの物語を作ると目立つのではないかとすら思える勢いです(笑)。物語には流行り廃りがあるものですが、あえて流行の逆を行ってみるのも手でしょうね。

さて、この物語に関して多くを語ると、簡単にネタバレになってしまいます。また、物語の核となる部分は、既に多くの作品で散々使われてきたものです。その意味では目新しさはありません。逆に、それが独特の柔らかい絵柄、捻りすぎない素直な文体とも相まって、何とも言えないほのぼのとした空気感を醸し出しています。これはこの作者さんの物語に共通する特徴でもありますね。

また、これもこの作者さんの物語に共通していますが、そんなほのぼのとした空気の中に、ちょっとどろどろとした事件を織り交ぜてくるんですよね。意外とこういう「攻め」の姿勢が見られるもの、あおぞら幼稚園らしさを感じさせてくれて、面白いところ。ほのぼのなところと、ちょっとした「攻め」の部分が、意外とぎりぎりのところでバランスが取れており、ほのぼのな箇所と、どろどろな箇所(今作の場合そこまでではありませんが)が、お互い引き立てあっているのが、この作者さんの優れた感覚なのではないかと思います。

ただ、シナリオはストレート過ぎて少々拍子抜けを感じるかも知れません。ヒロインである恵理が実は……という部分については、短編でもあることで、それほど意外性を求める必要もないとは思うのですが、彼女の隠された事情については、もう少し前半から何かしらの情報を出してもよかったのではないでしょうか。そこが描かれないにもかかわらず、彼女の正体については早々と読者には想像がつく作りになっているため、そこにはちょっと展開バランスの悪さを感じてしまいました。あとはせっかくタイトルにもしているのですし、「桜」をもう少し前面に出してもよかったように思います。

展開が王道、ストレートな分、ラストも特に驚くようなオチがついたりはしないのですが、その分、全体の空気感と合わせて、心地よい収まりの良さを感じさせてくれるのは美点です。やたらと尖った作品ばかりプレイしていると、疲れてしまいますからね。そういう意味で、最近あまり見ない、こういう作品は貴重です。細かいことを言えばもっと工夫の余地はあると思うのですが、普通の物語を、誠実に丁寧に描けば十分楽しめるということが、こういう作品をプレイするとよく分かります。

ツールなNScripter。レイアウトは左側にテキストウィンドウがある独特のタイプですが、1行が長過ぎずにとても読みやすいですね(最近ワイドウィンドウで、やたら1行が長い作品が多いので……)。選択肢はなく、プレイ時間は20分。単語の選び方など、文章はお世辞にもこなれているとは言い難いのですが、それがこの作者さんの作品の味わいですし、凝り過ぎた文章よりはむしろ好印象だったりします。このご時世だからこそ、あおぞら幼稚園の作品が再評価、されてもいいかも知れません?
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