第795回/生まれてくれてありがとう - Lunatopia(ひとさじ) - ファンタジー
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第795回/生まれてくれてありがとう - Lunatopia(ひとさじ)

ファンタジー
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Lunatopia

Lunatopia■制作者/ひとさじ(ダウンロード
■ジャンル/子供の心に寄り添うSF童話ノベル
■プレイ時間/40分

月の都に住む「星の子」。立派な星になるため、勉強の毎日。ある日、月の女王に呼ばれた星の子は、お供のアステールと一緒に、地球へ行って泣いている子供たちの悩みを聞き、月に来るように誘うという任務を与えられる。地球に向かった星の子とアステールは、泣いている子供の声を頼りに、子供の夢の世界を彷徨うのだが。ちょっと変わったSF童話ノベル。

ここが○

  • 絵本のようなイラストが素敵。
  • SFと童話の世界が融合した面白い世界観。
  • 押し付けがましくない範囲で込められたメッセージ性。

ここが×

  • 終わり方が少々素っ気ない。
  • 実は残酷な描写があるので人を選ぶかも。
  • 探索パートがもうちょっと生かされていれば。

■生まれてくれてありがとう

私は何かというと旧作を探しにいきたくなるのですが(笑)、旧作ばかりプレイしていても、それはそれでバランスがよくありません。なので今回は最近公開された作品をご紹介します。「Lunatopia」は「Luna」と「Utopia」を合わせた造語でしょうね。「月の楽園」というところでしょうか。作品紹介ページのあらすじや、画面写真を見るとSFなのかなと思いましたが、むしろファンタジー風です。SF童話ファンタジーと言いましょうか。

この作品は、最近ご紹介した「散華奇譚」の作者さんの作品です。作品の方向性はかなり違いますが、今回はモチーフに童話も入っていることで、イラストが非常に雰囲気に合っています。こういうタイプの絵は、存在自体はそれほど珍しくありませんが、フリーノベルゲームではあまり見ないタイプの絵です。線がはっきりしている上、適度にデフォルメが効いていて、とても魅力的なイラストです。青を基調としたタイトル画面のイラストが非常に印象的ですね。

Lunatopia主人公は「星の子」。一人前の星になるために月の都で修行をしている子供です。この辺りの少し変わった設定は、作中で完全に説明されている訳ではないので、「これはそういうものなのだ」と納得してしまいましょう。もう少し説明があっても良かった気はするのですが、作品の世界観がファンタジー、童話的ですし、あえてあまり説明しないこういう手法もありだと思います。

星の子は、ある日月の女王に呼び出され、初めて地球へ行くことになりました。地球で困っている子供を助けるという任務のためです。星の子は、お供のアステールを連れて、地球に旅立ち、泣き声を頼りに困っている子供を探します。こんな感じの導入です。物語は全4章で、第4章は終章。第3章までは、それぞれ誰でも知っている童話がモチーフになっており、子供の悩みを聞き、月に来るように誘ったり誘わなかったりします。

第1章は「月明かりと赤ずきん」。第2章は「雲の上のジャック」。第3章は「人魚姫が歌うために」。どの童話がモチーフなのか、すぐ分かりますよね。SF風の設定と童話の設定という、一見ミスマッチな取り合わせが面白い効果を生んでおり、また作品の根幹をなすテーマもそこに無理なく織り込まれています。純粋SFでこのテーマを取り上げると、少し浮いてしまったかも知れませんが、面白いことに童話の要素を組み込むことで、テーマに説得力が出ていたように感じました。

そして、演出も非常に優れています。凝った画面レイアウトや、絵本を思わせる1枚絵、各章冒頭の導入部など、思いつきで作ったのではなく、かなりじっくり考えて構成されたのではないでしょうか。この演出が、この作品ならではの雰囲気を高めているのは間違いないところです。最初はファンタジー要素のあるSFなのかと思いきや、むしろ逆で、SFのエッセンスを持つ童話ですね。そしてその融合が物語にぴったりとハマっており、そこに演出が大きな力を果たしたことは間違いありません。

ただ、今作独特の仕掛け、例えば探索画面や、月に誘うことを決めた後の名前入力シーンが、あまり意味がないのですね。探索場面は何も探索しなくても結果は変わりませんし、名前入力も同様です。探索シーンは、もちろん演出としては面白いですし、子供たちの心の内面を象徴的に描いた場面を調べることで、少しずつ知ることができるという意味では興味深いですが、それならそれで、もう少し子供たちの抱えている問題を明確に描写しても良かったのでは。名前入力シーンについても、せっかく入力させるなら何かの仕掛けは欲しかったように思いました。終わり方も少し素っ気なく、エンドロールくらいはあっても良かったのではないでしょうか。

各章のラストで、星の子は子供たちを月に誘うのですが、誘った後の展開が衝撃的です。最初は意味がよく分からなかったのですが、分かった瞬間に「ええ!?」と思いました。ある意味残酷な展開で、人によって好みは分かれるでしょう。しかし、この手の問題を取り上げた作品としては、単にこの問題を「苦しみから逃げるため」と美化、正当化することなく、ちゃんと綺麗なオチを用意しているところ、そしてそのオチのメッセージ性が作品世界に非常に上手くマッチしているところに、この作品の構成の上手さを感じました。

ツールはティラノスクリプトです。プレイ時間は40分くらい。エンディングは3つで、全員を月に誘った時、1人または2人を月に誘った時、誰も誘わなかった時の3つで分かれます。どの順番で読んでもいいのですが、個人的にはこの順で読むことをお勧めしておきます。他の作品にはないこの作品ならではの世界観を味わえて、最後は込められたメッセージ性がしっかり心に沁みてきます。それと些細なことですが、読みやすいフォントを使っている上、文字も大きく大変読みやすく、行き届いた配慮を感じました。よく作られた物語だと思います。
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