第797回/いつもいつまでも一緒だよ - 浮島に巡る想い(あおぞら幼稚園) - 恋愛
FC2ブログ

NaGISA net - フリーノベルゲームレビュー

ARTICLE PAGE

作品リスト − 新着順名前順プレイ時間順ジャンル別掌編
久住女中本舗作品リスト - 新着順/名前順
Peing質問箱(リクエスト、ご質問お気軽に)

第797回/いつもいつまでも一緒だよ - 浮島に巡る想い(あおぞら幼稚園)

恋愛
  • comment0
  • trackback-

浮島に巡る想い

浮島に巡る想い■制作者/あおぞら幼稚園(ダウンロード
■ジャンル/浮島脱出恋愛ノベル
■プレイ時間/1時間

人口わずか500人の浮島で暮らす高校生の吉川秋人は、幼馴染の市丸美並と変わらぬ日々を過ごしていたが、ある日浮島があと1週間で沈んでしまうことを知らされる。変わらないと思っていた日常が突然変化し、戸惑う秋人たち。そんな秋人と美並を見て、友人の近藤由真と桜井翔太は、なんとか2人をくっつけようとするが。ベタベタ甘々な短編恋愛物語。

ここが○

  • 最近見ないほどのベタベタな恋愛物語が楽しめる。
  • 短編ながら豊富な1枚絵。
  • 大変な状況の中でも、日常の大事さを味わえる。

ここが×

  • 浮島が沈むという危機感が伝わってこない。
  • 主人公が優柔不断過ぎて過剰移入しにくい。
  • 唐突な感じがする終わり方。

■いつもいつまでも一緒だよ

懐かしの「あおぞら幼稚園」作品補完企画(いつ企画になったんだ)の第2回目は、「浮島に巡る想い」です。「あおぞら幼稚園」の作品は、短編・掌編が大部分を占めますが、この作品は1時間程度の比較的まとまった長さです。その意味では、確かふりーむのコンテストの受賞作だったはずで、その意味では「Friend & Solitude」「桜日和」と並んで、「あおぞら」の代表作の1つと言っていいでしょう。2007年の作品です。

舞台は人口500人の浮島。ただ、あまり人口500人の浮島っぽくありません。私の父の実家が、人口1000人ちょっとの村でしたが、この規模になると、学校と言っても全校で数人くらいの規模で、当然買い物ができる場所など小さな個人商店くらいしかありません。500人の島で高校の規模はそれなり、というのには若干の違和感を覚えました。リアルであればいいというものでもないですが、もう少し描写に真実味があっても良かった気はします。まあそこはそれ、そういう世界観なのだと思ってしまいましょう。

浮島に巡る想い主人公は高校3年生の吉川秋人。その幼馴染が市丸美並。なぜか秋人は美並を「美並さん」とさん付けで呼びます。非常に珍しいですね。その分最初は少し違和感がありましたし、そう呼ぶようになったきっかけのエピソードでもあればとは思ったのですが、主人公の一歩踏み出せない性格にはよく合っていたのではないでしょうか。そして、秋人と美並のクラスメイトであり親友の、桜井翔太&近藤由真。この4人を中心に物語が進みます。

そしてある日学校で先生が、この浮島があと1週間で沈むという事実を報告します。なので秋人たちは1週間で島を離れなくてはならなくなりました。この箇所も、「いきなり『あと1週間』!?」と感じてしまいました。先ほどの島の描写についてもですが、全体にリアリティが薄く、また1週間で島が沈むという危機感があまり感じられなかったのが、ちょっと難点です(地震が起きたりはしていますが)。リアルでさえあればいいというものでもありませんが、折角の面白い設定を生かし切れていないように感じて、そこはちょっと惜しいなと思いました。

さて、島を離れるまでの残り1週間。ここで翔太と由真に煽られ(?)、秋人は美並に告白することを決心します。が、秋人が絵に描いたような優柔不断で、行動に踏み切れません。ここは少し読み手を苛立たせるところかも知れません。彼の後ろ向きな優柔不断さばかり強調されているので、もう少しいい意味での彼の優しさを前面に出すような場面があれば、だいぶ違ったのではないでしょうか。

それが象徴的に現れているのが、先生に手伝いを頼まれ、由真(待っているのは美並だったのですが)との約束をすっぽかすシーン。「いくら優柔不断でも、それは駄目だろう」と思ってしまいました。秋人の優しさが招いた結果ではあるのですが、だからこそ「彼の優しさのプラスの部分」を、もっと描いていれば、と思いました。まあ、後半に美並が少しそういう過去の思い出を語りはするのですが。

それと、前半で少しだけ出てきた陸上部の後輩の女の子が、そのシーンだけのちょい役で終わっていたのが、少し残念です(1枚絵まであるのに)。あそこまで意味深な行動をとるのですから、彼女を上手くストーリーに絡ませれば、より恋愛ものとして深みを出せたような気がします。まあ、雪双葉さんらしいイベントだなあと思って、これもありかなという感じですが(笑)。

と、気になる点ばかり書いてきましたが、最近では珍しいほどのストレートでベタベタ甘々な恋愛もので、そういう意味では、最近の作品では決して味わえない楽しみ方ができる作品です。手作りのお弁当から始まって、クラスでのお別れ会での「仮想結婚式」には、悶絶してしまうプレイヤーもいるのではないでしょうか(笑)。また、友人の由真や翔太が上手く秋人&美並を支えており、キャラクターの使い方に上手さを感じました。まあ、翔太は秋人たちに色々言う前に、自分の恋を何とかしろ、とも思いましたが(笑)。

浮島が沈んでしまうと言う、非常にスペクタクルなラストシーンなのですが、最後まで危機感を感じさせず、明るくのんびりした雰囲気で大団円を迎えます。これがこの作者さんの作風だと思いますので、ありとは思いますが、もう少し収まりがいい終わり方だと気持ちよかったかも知れません。浮島どうこうをあまり意識せず、普通の恋愛ものとして読んだ方が、素直に楽しめるでしょう。

ツールはNScripterです。短めの物語ですが、要所で1枚絵が豊富に出てきて楽しめます。読了後にはおまけでCG鑑賞もできます。レイ時間は冒頭に書いたように1時間内外。選択肢のない一本道の物語です。現在なかなか大変な世の中ですが、「世界が大変でも、一番大事なのはいつもの日常で、それはどこにいても変わらない」というテーマのこの作品のような存在は、貴重なのではないかと思いました。今こそ味わってみたい物語です。
関連記事

Comments 0

Leave a reply