第799回/鏡の中からアクトレス - ミラーリングサマー(Ryokka WORK) - 日常
FC2ブログ

NaGISA net - フリーノベルゲームレビュー

ARTICLE PAGE

作品リスト − 新着順名前順プレイ時間順ジャンル別掌編
久住女中本舗作品リスト - 新着順/名前順
Peing質問箱(リクエスト、ご質問お気軽に)

第799回/鏡の中からアクトレス - ミラーリングサマー(Ryokka WORK)

日常
  • comment0
  • trackback-

ミラーリングサマー

ミラーリングサマー準推薦
■制作者/Ryokka WORK(ダウンロード
■ジャンル/双子の兄を探して夏の田舎ノベル
■プレイ時間/3時間

亡くなった母が、息を引き取る直前に口にした、双子の兄の名前。父に聞くと、兄は心の病を患い、施設に預けたという。主人公朋樹は激昂し、兄を探すべく故郷の二示申町へやって来た。そこで出会ったのは、朋樹の妹を自称する女性、夏通。2人は、巡り巡ってとある神社に居候させてもらうことになった。後半明らかになる意外な事実に腰を抜かす夏の物語。

ここが○

  • キャラクターの掛け合いが面白い。
  • 複数の謎が幾重にも折り重なった重厚な構成。
  • 腰を抜かしてしまう終盤の展開。

ここが×

  • 誤用がちょっと多い。
  • 少し伏線不足を感じるところも。
  • 終盤感じる若干の消化不足感。

■鏡の中からアクトレス

今回は新作の、しかもある程度長い作品を探そうとノベルゲームコレクションを探したのですが、1時間以上のカテゴリーで探すと、掌編や短編と比べ、非常に感想コメントや評価がついている率が低いのです。確かに長編は気軽さにおいて掌編、短編に劣りますが、物語を味わったという満足感、幾重にも絡み合った巧妙な伏線が解ける様、意外などんでん返しなど、長編でしか味わえない面白さも、またたくさんあります。

気軽さ故に普段掌編、短編をプレイする人も、時には長編の醍醐味を味わってみてはいかがでしょうか。そしてこの作品は、まさしく長編ならではの面白さが詰まった作品です。私は日頃から、感想や評価のついていない作品を選んでプレイする傾向にあるのですが、今作は感想も評価もついていないのが不思議なくらいの良い作品でした。是非この作品を多くの方にプレイしていただきたいと思い、こうしてご紹介する次第です。

ミラーリングサマー舞台は二示申(ふかみ)町という田舎町。主人公の朋樹がこの町に列車(電車と書いてましたが、こういう町にはやはり電車ではなく汽車が似合う気がします)。に揺られてやって来るところから、物語がスタートします。彼はつい最近母親を亡くしたのですが、母は亡くなる前に、彼が知らない双子の兄の名前を口にしたのでした。父に問い詰めたところ、兄は精神疾患を患い施設で暮らしているとのこと。朋樹は、兄に会おうと故郷であるこの町にやって来た、という訳です。

ここで出会うのが、自称朋樹の妹である夏通(なつ)。何故かエコに目が無いという変な彼女と朋樹のやりとりが面白く、序盤はこの2人の掛け合いだけで十分楽しめます。そして、兄である「なるき」を探すも一向に手がかりが掴めないまま、さらに深まる謎。典型的な「謎主導型」の物語です。中盤には七榎、朱鷺子などの新たな登場人物も現れ、彼女らも独特の個性で物語を彩ってくれます。朋樹、夏通、美蘭(孫)など、キャラクターも皆魅力的です。

最初に気になったのは、ちょっと誤用が目立つこと。誤用でも意味が想像できる箇所はいいのですが、「これは元々どういう意図で書かれたのだろう」となってしまう箇所もあり、少し惜しまれます。誤用で作者さんの意図が伝わらなくなってしまったのでは、もったいないですからね。それを除けば、文章自体は軽快で読みやすく、好感が持てるものでした。

さて、物語は中盤くらいまでなかなか動きません。手がかりを握っていそうなキャラクターはたくさん出てくるのですが、その度に謎が深まるばかりで、なかなかその謎が解けるきっかけが出てこないのです。やきもきさせられると言えばその通りですが、今作はそこを登場人物同士のやり取りを楽しく描くこと、そして謎を小出しにしてそれまでより更に「引き」を強くすることで、上手く乗り切っています。通常この手の作りにしてしまうと、中盤までがどうにも退屈になってしまうことが多いですが、今作ではさほどそう感じませんでした。謎が謎を呼ぶ展開とは、よく使われるフレーズですが、それがはまった好例と言えましょう。

そして後半から終盤にかけて、それまで張り巡らせた伏線、散りばめた謎が一気に解け、物凄い展開を見せます。それこそ「え!?」と固まるレベルの事実が3つくらい立て続けに明らかになる感じ。特に今作で最も大きな秘密とも言えるとある謎が明らかになった瞬間は、全く予想もしておらず、完全に不意をつかれました。これだけの謎を矛盾なくまとめ上げ、ラストもきちんとオチをつけた作者さんの手腕は大したものだと思います。前半の謎が後半で解ける系統の物語の中でも、謎が解けていく時の爽快感という意味では、トップクラスです。

反面、あまりにも一気に様々な事実が明らかになり過ぎ、後半は少し消化不良の感もあります。メインの謎だけでも十分読み手には衝撃的なのですから、ラストで明かすのはそれに絞り、残りは徐々に読み手に気付かせる、くらいの作りの方がバランスが良かったかも知れません。また、少し伏線不足を感じるところもありました。特に主人公や七榎、朱鷺子の過去についてほとんど語られないので、そこにはもう少し言及があっても良かったのでは。

ラストは、今まで見たこともないようなオチのつき方をします。ハッピーエンドではあるのですが、予想の斜め上をいく凄まじいラストです。そして、ハッピーエンドでありながら、少し含みを持たせているのが興味深いですね。タイトルにもなっている「ミラーリング」が、何重にも物語に絡んできており、それが結実している終わり方とも言えます。いろんな意味で「凄い物語を見た」という感じでした。

ツールはティラノスクリプトです。選択肢でバッドエンド3種類、トゥルーエンド1種類に分岐しますが、選択肢1つで分岐しますので、攻略は難しくありません。プレイ時間は3時間くらいですが、文字表示速度の変更ができないのが、このプレイ時間としては少し辛いものがありました。とにかく、読み終えた時は「凄い作者さんが出て来たな」というのが第一印象です。謎を積み重ねてそれが最後で一気に解けるタイプの物語がお好きならば、是非プレイすべきです。こんな衝撃を味わえる物語には、滅多に出会えませんよ。
関連記事

Comments 0

Leave a reply