第800回/いつもの場所で読書百遍 - ショート・ショート・ショート100(Stories Café) - オムニバス・その他
FC2ブログ

NaGISA net - フリーノベルゲームレビュー

ARTICLE PAGE

作品リスト − 新着順名前順プレイ時間順ジャンル別掌編
久住女中本舗作品リスト - 新着順/名前順
Peing質問箱(リクエスト、ご質問お気軽に)

第800回/いつもの場所で読書百遍 - ショート・ショート・ショート100(Stories Café)

オムニバス・その他
  • comment0
  • trackback-

ショート・ショート・ショート100

ショート・ショート・ショート100準推薦
■制作者/Stories Café(ふりーむノベコレ
■ジャンル/ショートショート100本詰め合わせノベル
■プレイ時間/3時間半

お気に入りのカフェでお気に入りの本を気軽に読む、そんなコンセプトで作られた、1本2分で読める掌編の100本詰め合わせノベル。ジャンルは日常、恋愛、ミステリー、ホラー、SF、ファンタジーと様々。作者は、お馴染みの方からフレッシュな方まで、総勢17人。おまけも充実。さあ、コーヒーでも飲みながら、気軽にページを開いてみよう。

ここが○

  • とにかく100本の物語という数が圧巻。
  • フォントが読みやすく、システムやデザインも凝っている。
  • おまけシナリオなど、追加要素も充実。

ここが×

  • シナリオにより表示形式がかなり違い、面食らうことも。
  • 読了しても特にエンディングがある訳ではなく、少し寂しい。
  • 中には「え、ここで終わり?」という話もあったりする。

■いつもの場所で読書百遍

記念すべき800回目。ちょうどタイミングが合ったので、この作品を持ってくることを狙っていました。私もメンバーに入り、約2年前から制作が続けられていた「ショートショートショート100」です。300本目が「エイト・ストーリーズ」、400本目が「ななつぼし」という、いずれも私が関わった合作ノベルでしたが、今回も上手く私が関わった作品をきりのいい番号に持ってこれました(笑)。

内容はタイトルの通りです。2分ほどで読める掌編を、100本集めたもの。過去にも掌編を集めた作品は色々ありましたが、流石に100本というのは前代未聞です。一応100のお題で100の掌編を集め、それで1本のストーリーを作るという「hundred」という作品もありましたが、あちらは「1本のお話を100分割した」という色が強いものでしたので、純粋な作品集ではありません。100本の掌編集なんて、まさに空前絶後。恐らくこんな本数を集めた作品は、二度と出てこないのではないでしょうか(作るの大変ですからね)。

ショート・ショート・ショート100作品のコンセプトは「喫茶店でコーヒーを飲みながら、気軽にお気に入りの本を読む」というもの。各作品は全て千五百字前後です。デザインやタイトル画面に入る前の演出などにそれが生かされており、雰囲気上々です。そして、操作性もよく考えられています。何より、フォントが非常に読みやすく快適です。ノベルゲームの文字は、やはり太めのゴシックが一番読みやすいなと、改めて実感させられました。

それでは、100本全部をご紹介するのは不可能ですので、気に入った作品について軽くご紹介していきましょう。なお私は掌編であっても、きちんと起承転結があり、意外な展開を見せる構成の作品が好みです。

「10.アールグレイ」。自称超能力者という電波な子が登場する純愛ストーリー。ちょっとした描写で心情を描き出すのが大変上手い。お気に入りの一編。「20.いるだけでいいんだよ」。いじめられっ子が大人になり、昔を回想するというストーリー。いじめを描くのにこういう手法もあるんだなと感心しました。「22.豚王vs.勇者軍団」。ナンセンスなコメディで、演出で笑わせるタイプ。ラストは私も「やめてくれ!」と思いました(笑)。「29.幻炎のプリズム」。物語というより一場面という感じですが、その前後が想像できる描写がじんわりと胸に染みてきます。

「30.聖キャラ学園ツンデレ科」。創作をテーマにした作品は何本かありますが、設定とキャラクターがマッチし、物語を作る人ならば共感できる物語です。「33.テトとナギ」。ファンタジー風童話。急ぎ足ながら展開がしっかりして、最後は綺麗なハッピーエンド。千五百字でギリギリまだ削ぎ落としていますが、しっかりした物語です。「34.レモンソーダ」。教室でのおまじないという設定が絶妙に活用された恋愛もの。この作者さんの持ち味が最大限に生かされています。

「46.レスキューミッション」。軽く読め、人情味を感じさせるSFの佳作。ラストに出てくるスタジアムの写真は、実は私が撮ったものです(維新百年記念公園陸上競技場での、レノファ山口−愛媛FC戦)。「52.世界終末予報」。淡々とした筆致で進む終末もの。抑えた筆致が物語にマッチして、上質の余韻を生んでいました。「65.クソリプコミュニケーション」。兄妹もの。Twitterを模した画面が凝ってます。SNSを上手く織り込んだ会話劇。「66.もう逃げない」。100本の中でも珍しいスポーツものですが、ちょっと捻ったオチが上手いですね。

「67.ホームレスのピアノマン」。ベタと言えばベタですが、実話だそうです。掌編でもこれくらいストレートなサクセストーリーは気持ちいいですね。「67.時を止めちゃった少女」。おまじないが絡む辺りは「レモンソーダ」と少し似ていますが、違った切り口で攻めている恋愛もの。程よい甘さが楽しめます。「71.恐怖のしょう斗さん」。上手い構成のホラー。ちゃんと呪いが解ける方法を、この作品そのものに結び付けている作りが巧みです。

「77.最下の頂点」。4枚のカードを抜く手品はどうやるのだろうと考察してしまいました(笑)。主人公に癖はあるものの、トランプという小道具の使い方と、オチへの結び付け方が上手いですね。「79.勇者の力」。RPG風ファンタジー。戦闘シーンの迫力と、短く凝縮された美しいラストは流石です。「80.生とは」。序盤は哲学風の難解な物語かと思いきや、前半を生かした後半のほのぼの幸せな落とし方が秀逸。

「81. 報告書SSS100」。「しょう斗さん」同様、この作品をテーマにしたホラー。文字化け演出と、ラストが非常に決まっていて、掌編ホラーとして一級品。「84.打ち切りエンドを俺はどうする?」。テンポの良いサクセスストーリーですが、SNSを活用し、「意外と実際に起こりうるかも」と感じさせるリアリティがとてもいいですね。「94. ゴーストライターズ〜苦悩〜」。最後の1行に、思わず笑ってしまいました。ジャンルは伝奇ですが、いいコメディです(笑)。「98.あやかしの君」。掌編ながらしっかりした構成と展開の伝奇ものです。悲哀を感じさせる終わり方には、筆力を感じさせられますね。

駆け足で印象に残った作品をご紹介しました。そして、中には作者さんの他の作品のキャラクターが出てきたり、世界観が共通だったりする作品もありますから、そういうところを探してみるのも一興でしょう。もちろん作者さんの別作品を読んでいなくても楽しめますが、読んだことがあればより楽しめます。作者さんによっては、作風通りのものもあり、意外な作風のものもあり、そういう意味でも面白いでしょう。中には、「え、これで終わるの?」というような話もありますが、そこはそれ千五百字ですからね。その前後を色々想像してみるのもいいものです。

また、「おまけの部屋」からは、各作者の作品を全部読んだら解放されるあとがきの他、20本読了後とに解放されるおまけストーリーもあります。このおまけストーリーが、最後はきちんとこの作品そのものに繋がっていて、非常に味わい深いです。100本全部読んでから一度に読むよりは、20本ごとに読むのをお勧めします。そうすれば、100本読み終わったあと、一際充実した読後感を味わえるはずです。

難点というほどではありませんが、作者さんが17人もいて、改行のパターンなども違うので、少し戸惑うこともありました。1行で改ページする作品もあれば、文章がずーっと続く作品もあります。まあそれも多人数の合作による味わいだと思ってください。それと、エンドロールに相当するものがないのは少し寂しいですね。おまけの最終話を読んだ後にでも、エンドロールがあれば締め括りとして綺麗だったかも知れません。

ちなみにこの作品、ふりーむ版とノベルゲームコレクション版があります。タイトル画面が違うほか、ふりーむ版はかなり起動が速くなっています。多くの方はノベコレからダウンロードされるでしょうが、ふりーむ版もやってみてください。起動の速さに、きっと驚かれると思います。

とにかく、こういう試みは過去に例がありませんでしたし、これからも多分ないでしょう。そう断言できるほど、制作は大変でした(笑)。まあ私が大変だった訳ではないのですけどね。私も6本書いていますので、私の作品含め、多彩な100本の掌編をどうぞ楽しんでください。ツールはティラノスクリプト。1本は千五百字ですので、2分程度。100本とおまけ、後書きまで読んで、3時間半から4時間くらいでしょう。全ての作品に選択肢は存在しません。とにかく、掌編集としてはかつてない力作です。是非プレイしてください。そしてできれば私の作品の感想を聞かせていただけると嬉しいです(笑)。
関連記事

Comments 0

Leave a reply