掌編ミニレビュー第31回 - 春嵐によせて/今宵、忘却列車にて。/VOICE - 掌編ミニレビュー
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掌編ミニレビュー第31回 - 春嵐によせて/今宵、忘却列車にて。/VOICE

掌編ミニレビュー
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91. 春嵐によせて

春嵐によせて準推薦
■制作者/ナガネギ舎(ダウンロード
■ジャンル/日常
■ツール/ティラノスクリプト


ぱっと見で、絵が大変美しく目を引いた作品です。アナログ風の色使い、タッチが綺麗ですね。立ち絵を使わず、たくさんの1枚絵で進む形式も手伝って、絵本でも見ているようです。タイトルは最初「はるあらしによせて」と読むのかと思ったら、ファイル名から察するに「はるかぜによせて」と読むようです。これは普通の読みではありませんから、できれば振り仮名を振っておいて欲しかったところです。(20/5/3追記/作者さんによると、「はるあらしによせて」が正しく、ファイル名の方が違うんだそうです)

主人公の名前はハンス。ドイツ人なのでしょうか。ある日美しい歌を歌う少年と出会います。自身も音楽をやるハンスは、自分が持っていた楽譜を少年に渡すのですが。あまり背景事情などが詳しく語られない、ちょっとした出会いと別れの物語です。このような物語は、しっかり設定やバックボーンを語らないと、訳が分からなくなって興醒めする場合と、適度に想像力を刺激して読後の余韻を高める場合がありますが、この作品の場合は後者と言っていいでしょう。この手法が成功している例だと思います。

明確に彼らの立場が語られる訳ではなく(少年が何者だったのかは最後までよく分からず)、その意味で少し消化不良を残さないでもないのですが、ささやかな出会いと別れがそこはかとない希望を感じさせる、なかなか上質の読後感を味わわせてくれる小品でした。ピアノソロのBGMも雰囲気を増しており、雰囲気重視の掌編をプレイしてみたい方にはお薦めできる一作です。

92. 今宵、忘却列車にて。

今宵、忘却列車にて。■制作者/グレうさぎ(ダウンロード
■ジャンル/不思議系
■ツール/ティラノスクリプト


終始不思議な列車の中で話が進む物語です。「それじゃあ、またね」「無限夜行」「第七号車」「永遠の夢見」など、主な舞台が列車内という作品は意外と多いものですが、その辺りの作品を彷彿させる雰囲気です。列車内ということもあり、ほとんど橘という少年のバストアップの1枚絵だけで物語が進みますが、不思議な雰囲気の展開もあって、退屈を感じさせないのは上手い構成です。

この作品は、少年同士の友情物語です。この短さに物語を収めるには、少し説明が足りないように思えるところもあるのですし、エンドによっては「何のこっちゃ?」となる場合もありますが、全部のエンドを見ると、色々な選択肢を試すために何度もプレイするという行動自体にストーリー上意味があるということが分かり、掌編にもかかわらず優れた構造を持った作品です。

なおこの作品は、フォントが非常に読みやすく好印象でした(「積層のAestivum」と同じフォントです)。掌編であっても文字の読みやすさは、プレイした時の快適さに大きく関わるんだなあと実感しました。とにかく、ちょっと不思議な世界観で、一場の夢のような時間を過ごせる物語です。タイトルの意味が分かった時は、きっと「なるほど」と感心させられるはずです。

93. VOICE

VOICE■制作者/NOTE BOOK(ダウンロード
■ジャンル/病院・闘病
■ツール/Live Maker


初出は2007年、今から13年前の文章だけの地味な作品ですが、絵がある作品にはない味わいのある小品です。そもそも私は、文章だけの作品というのは、絵がある作品とは別ジャンルとさえ思っています。絵がないことはデメリットでも何でもなく、絵がある作品にはない味わいを感じさせてくれる作品がとても多いのですが、この作品は短いですが、文章のみの作品ならではの雰囲気があります。

主人公は、かつて夢を持っていながらそれを諦め、望まない仕事で疲れ切っている毎日。そんな毎日を少しでも紛らわすべく、チャットで知り合った女性に会いに行きます。が、たどり着いた場所は病院。チャット相手の女性は、言葉が喋れないのでした。スケッチブックを持った女性と時間を忘れるほど会話し、2人はやがて屋上へ。大袈裟な起伏はありませんが、とても上質な空気感の中物語が進行していきます。

屋上での演出も、地味ながら非常に効いていました。ただ、この作品もこの長さで語るにはちょっと説明不足を感じるところがあります。その分想像力を刺激してくれるところもあるのですが、もう少し長く、せめて30分の尺があれば、かなり化けたのではないでしょうか。あの先の2人に前向きな希望を感じさせてくれるラストで、読後感自体はとても良好です。ちょっとした試練の中、前向きで心温まる結末の掌編を読んでみたい方にはぴったりだと思います。
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