第819回/僕が感じた君の心 - 君が見た景色(優蘭) - ファンタジー
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第819回/僕が感じた君の心 - 君が見た景色(優蘭)

ファンタジー
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君が見た景色

君が見た景色準推薦
■制作者/優蘭(ダウンロード
■ジャンル/成人の儀で魔女の森一人旅ノベル
■プレイ時間/1時間

ウィッカという村には、女性は18歳の誕生日に、三日三晩をかけて白魔女が住むという深い森へ行き、無事に帰ってくるという「成人の儀」があった。そして成人の儀を間近に控えたエリスメルト・ロニクール。不安で押し潰されそうになるエリスは、それでも勇気を出して成人の儀に臨む。そこで見たものは。語り口調や物語の構成が独特な、ファンタジー物語。

ここが○

  • 二人称描写を使った独自の描写。
  • しかもそれがストーリー上意味があるという、練られた構成。
  • 美しく雰囲気たっぷりの背景写真や、動きを伴った演出。

ここが×

  • ちょっと文章がくどく感じる箇所がある。
  • エフェクトの切り替えが遅く感じる箇所がある。
  • バックログの仕掛けは、面白さを感じる反面煩わしさも感じる。

■僕が感じた君の心

君が見た景色せめて、笑ってくれたなら。」の作者さんの新作です。私は、一度プレイした作品の作者さんは可能な限りチェックするようにしていますが、この作者さんは前作が大変印象が強かっただけに、新作がどのような作品になるか、かなり注目していました。前作は、文章だけのある意味地味な作品ではありましたが、凝った構成やあくまで「文章を生かす」という意味での演出が見事な物語でした。

とは言え、「せめて、笑ってくれたなら。」という作品を読んだ方ならお分かりとは思いますが、あの作品は良くできてはいるものの、非常に重く暗い物語なのです。なので今作も、そういうストーリーなのかと思って途中まではびくびくしながら読んでいました。何せしょっぱなからいきなり「私は、魔女を殺しました」ときますからね。この時点でかなり身構えてしまいました(笑)。

物語としては一応ファンタジーということになるのでしょう。魔女も出てきますし。ただ、ファンタジー風の展開は全くありません。魔女も別に魔法を使ったりはしません。ファンタジーの体裁をとった、主人公の成長物語です。そして、物語それ自体はある意味とてもシンプルです。主人公であるエリスが、魔女の森へ行って帰ってくるだけですから。しかし、物語を立体的に見せるために、かなり色々な工夫がなされており、そのため長くはないプレイ時間ながら、非常に重厚な読み応えを味わえます。

主人公の名前はエリスメルト・ロニクール、通称エリス。ウィッカという村に住んでいますが、この村には、18歳になった女性は、魔女の森で3日旅をするという「成人の儀」を行うという伝統がありました。そしてエリスの成人の儀まであと数日。不安に苛まれながら、魔女の森を目指したエリスが見たものは? そしてエリスは無事に成人の儀を終えて帰って来れるのでしょうか。こんな感じの内容です。

君が見た景色まず目に付くのは、独特な語り口調です。一人称ではないのですが、さりとて三人称という訳でもありません。あえて言えば「二人称」(この理由は作品中で分かります)。こんな変わった語り方の物語は初めて見ました。ただ語りが変わっているだけではなく、これが物語の構成にも絡んでくるのです。ラストでその意味がわかるのですが、作品のテーマとも関係するその事実に、「なるほどねー」と心底感心してしまいました。相変わらずこの作者さんの構成能力は冴えています。

また、背景画像の美しさも相変わらずです。素材なのですが、1枚の写真としても美しいものばかりを選んでおり、かつ非常に作品世界に合っています。これは探すのもなかなか苦労したのではないでしょうか。そして、動きを使った演出も、要所で非常に効いていました。アニメ等の動きを使った演出の場合、ともすれば「動きそのものを見せる」になる傾向もあり、それはそれで楽しいものですが、この作品の場合は、そういう演出はあくまで主役である文章を引き立てるために終始しています。節度が効いていますし、実際に演出によって文章の魅力が増しています。ただ一部エフェクトの切り替えが少し遅く感じる箇所もありました。演出が多いですからそう感じたのかも知れません。

文章力自体は高く、じっくり味わって噛み締めるタイプです。が、若干文章が説明的に過ぎると感じる箇所もありました。この作品は、語り口が独特な上、何と一切会話文が存在しませんので、文章の説明的な印象に拍車をかけている感もあります。これはこれで一つのスタイルだとは思うのですが、会話文がないのですし、少し緩急をつけるような箇所があっても良かったような気はしました。フォントが手書き系なのですが、そこまで読み辛さは感じませんでした。

この作品には会話文が一切ないと書きましたが、実は特定の効果音が鳴った時にバックログ画面を開くと、エリスの独白を見ることができます。これは良し悪しのような気もします。面白い効果があるなと感じた反面、少し煩わしさを感じたのも事実です。しかし、積極的に新しい試みを盛り込もうとする姿勢は、大いに評価されるべきだと思います。バックログ画面を使うことで、見えている物語を透かして見るような、図面の透視図を見るような感覚も味わえましたから、こういうやり方もありなのではないでしょうか。

先に書いたように、この作品には一切立ち絵も1枚絵も存在しません。またプロットとしては特に凝っている訳でもありません。しかし構成の上手さや締め括り方の巧みさもあって、物語を「味わう」という意味では、非常に満足度の高い作品だと思います。シナリオはプロットが命ではあるのですが、プロット以外の場所から不意打ちを食らわされ、しかもそれが構成や独特の語り方にも関係していると知った時の私の驚きを、これをお読みの皆さんにも是非味わっていただければと思います。

ツールはティラノスクリプトです。選択肢はありません。読む速度にもよりますが、50分くらいなのではないでしょうか。ゆっくり読めば1時間半くらいかかるかも知れません。メインのストーリー自体は単純ですので、あまり飛ばしてストーリーだけを追いかけるのは、ちょっともったいない。細かいところまでしっかり味わって読むことをお勧めします。絵がなくても、これだけ意欲的な作りの作品が作れるのですね。感服しました。
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