第822回/人と自然の楽園をここに - Kallipolis(在民都裕) - SF
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第822回/人と自然の楽園をここに - Kallipolis(在民都裕)

SF
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Kallipolis

Kallipolis■制作者/在民都裕(ダウンロード
■ジャンル/農業で街再生ノベル
■プレイ時間/40分

種田苗弘は母親と二人暮らしの若者。子供の頃に今の町に引っ越してきた。街の発展と共に人口も増え、街は様変わりしていった。そんなある日、街に謎の生命体「i」が現れ、人々の生活を脅かし始める。「i」との戦闘は長引き、人々は疲弊していく。苗弘は野菜を作りながら、毎日の仕事をこなすが、そんなある日……。独特の設定とテーマの短編物語。

ここが○

  • テーマがダイレクトに伝わってくるシナリオ。
  • 独自性の高い設定や物語。
  • 次々に色々なことが起こる展開。

ここが×

  • 少し盛り込み過ぎの感。
  • なので消化不良かんがあるのは否定できない。
  • 画面が大きすぎ、文章が読み辛い。

■人と自然の楽園をここに

Kallipolis旧作は旧作で魅力がありますが、やはりアイディアというのは月日が経てば新しいものがどんどん出てくる訳で、新作にも旧作にはない魅力があります。今回は、初めてノベルゲームを作られた作者さんによる作品だそうで、なるほど荒削りなところは感じますし、作り慣れていないところも確かにあります。しかし、他の作品に似ていない、この作品ならではのオリジナリティを感じされ、とても好感を持ちました。

もちろん、オリジナリティというのは、あればあれに越したことはないですが、ないからといって、独自性の高い作品に比べて何ら劣るという訳ではありません。オリジナリティにこだわる余り、伝えたいメッセージがぼやけてしまったのでは何にもなりませんから。しかしこの作品の場合は、独特の設定や物語を通じて、作者さんの訴えたいメッセージがよく伝わってきます。

言わば、単に目新しさを追って珍奇なシナリオを作ろうとした、目的としてのオリジナリティではなく、「独自のメッセージを伝えたい」という目的があってこその、独自の物語、結果としてのオリジナリティだと感じられました。だからこそ、荒削りな点は多々ありながら、読んだ時に作者さんのメッセージが強く感じられ、好感を持てたのではないかと思います。タイトルの「Kallipolis」は、語感からするとギリシア語風ですが、正確な意味はよく分かりません。タイトルも、何だか流行を追っていない感じで、この作品には合っているように感じられました。分類に迷った末「これをSFと言えるのか?」とは思いましたが、他に分類できるジャンルもないので、S Fということにしました。

主人公の名前は、種田苗弘。父親を亡くして今は家庭菜園で野菜を作りながら、母親と二人暮らしをしています。彼は子供の頃に今の町に引っ越してきたのですが、町はどんどん発展し、昔と様子がすっかり変わってしまいました。そんなある時、町に謎の生命体が出現し、人間を襲い始めます。その謎の生命体は、虚数単位にちなんで「i」と呼ばれていました。iの脅威に対抗するため、廃校を利用して対策本部が作られました。そんな世の中で起こる物語です。

Kallipolisこの物語は短編なのですが(どんなにゆっくり読んでも1時間はかからないはず)、かなり色々な要素が盛り込まれています。主人公である苗弘やヒロイン(?)の綾海の過去。2人の父親のこと。苗弘の上司である山内真人の秘密。討伐隊の隊長の謎。さらに町自体に隠された秘密などなど、この短編でよくこれだけ盛り込んだなというほどに、様々な設定や展開を詰め込んでいます。その意欲やよし、です。

が、流石にこの尺からすると、ちょっと盛り込みすぎたように感じました。そのせいで要素そのものも少し消化不良の点がありますし、更に、メインテーマであるはずの、六次産業について十分に語りきれていない感じがするのです。せっかく独自の面白いテーマを選び、それに合わせた設定を組み上げているのに、まとめ方が少し雑な気がするのですよね。ちょっともったいない気がしました。

作者さんが初めて作られた作品ということで、色々盛り込んだのかも知れませんが、もう少し絞り込み、シンプルにテーマを訴えるような作りにしても良かったような気がします。ヒロインの2人も、ちょっと扱いがどっちつかずの印象がありました。もう1つ、画面がちょっと大きすぎるように思います。絵だけを見るなら画面が大きくてもありとは思いますが、文字を読むのが大きな要素であるノベルゲームは、単に画面だけ大きくすると、文章を追いにくくなってしまいます。1行に表示する文字数をもう少し削るだけでも、かなり違ったのでは。文章自体も、こなれているとは言い難いところがあります。

と、気になるところもあるのですが、作者さんの「想い」がダイレクトに伝わってくる、フリー作品らしい味わいを持った作品で、このような味の作品は個人的にとても好みです。また、盛り込まれた設定も、それ自体を見れば面白く、この作者さんがもう少し物語を作り慣れ、中編以上の長さの作品を書けば、非常に面白いものが出来上がるのではないでしょうか? そう思わせてくれるだけの潜在能力を感じさせてくれるシナリオだったと思います。次々に色々なことが起こり、色々な事実が明らかになるので、短編とは思えない読み応えがあります。

ツールはティラノスクリプト。立ち絵の腕が切れていたりしますが、それはご愛敬。選択肢はなく、読了までは30〜45分くらいです。気になる点はあるものの、それ以上のパワーを感じた作品でした。この作者さんの今後の作品を、追いかけてみたくなります。何より、ちょっとだけ野菜栽培に詳しくなれます(笑)。面白い物語を味わえるのはフリーノベルゲームの楽しみの1つですが、「作者さんの思い」に触れられるのも、大きな楽しみです。それを思い出させてくれた一作でした。読んでその思いに触れてみてください。
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