第842回/目に写るのは永久の星空 - Eternal(kunsina) - SF
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第842回/目に写るのは永久の星空 - Eternal(kunsina)

SF
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Eternal

Eternal準推薦
■制作者/kunsina(ダウンロード
■ジャンル/2102年宇宙の旅ADV
■プレイ時間/1時間

西暦2102年。宇宙開発は資源を得る以上の目的を持たなくなり、世界的に開発予算縮小の傾向にあった。天才的頭脳を持つ少女ハルは、若くして宇宙飛行士となり、植民惑星ロールドへサンプル収集の任務を受け旅立つ。無事任務を果たし、地球への30日の帰途につくが、やがて知る世界の恐るべき謎を、ハルはまだ知る由もなかった。短編SFADVの傑作。

ここが○

  • 凝ったSF設定ながら誰でも理解しやすい。
  • だんだん真相に迫り緊張感が高まる構成。
  • 衝撃を受けること必至のラスト。

ここが×

  • 文字がちょっと読みにくい。
  • ただ会話が続くだけの前半は少し退屈かも。
  • 人によってはラストがすっきりしない可能性。

■目に写るのは永久の星空

Eternal私は作品探しに困った時は、過去に取り上げた作者さんの別の作品を当たることが多いのですが、この作品もそうして見つけました。「灰青の空」の作者さんによる作品で、絵柄は確かに似ていますが、今作の方が4年後に作られているだけあって、絵がかなり上手くなった印象を持ちました。プレイ時間で分類すれば短編の部類ですが、フリーでは比較的珍しい、本格的なSFです。

「灰青の空」は、荒廃した世界観の中にかなりグロテスクな場面もある、人を選ぶような強烈な作品でしたが、今作の主人公は宇宙船に乗った17才の少女。舞台となるのはその宇宙船の中だけです。各種の設定は凝っているのですが、スケールが大きすぎて掴みにくいところは決してなく、設定は本格派の正統派のSFながら、読み手が意味を使いやすい物語です。そして、SFならではの仕掛けが凝らされており、読了した時には唸ってしまいました。

時は西暦2102年。宇宙開発技術はかなり進んでいたものの、宇宙は資源採掘のための場という意味しか持たなくなった未来、宇宙開発の予算は世界的に縮小の傾向にありました。そんな中、17才の天才少女ハルが宇宙飛行士に選抜され、第17植民惑星ロールドへ、サンプル収集のために宇宙船アムリックに乗って旅立ちました。そして、ロールドで無事にサンプルを採取し、地球へ帰還します。

地球までは30日の旅。ところが、地球と通信が繋がりません。そのうち回線が回復するだろうと、ハルは宇宙省に提出するレポートを書いていましたが、何日経っても通信は回復しません。アムリットに搭載されているAIのテラに尋ねても要領を得ません。やがて、ハルは驚くべきものを目にし、この宇宙船アムリットに隠された秘密に迫っていくことになるのです。こんな感じの物語です。SF好きならば、これだけで興味を惹かれる出だしです。

Eternalこの物語は、前半はほとんどハルとテラの会話だけで進んでいきます。その会話も、さして重要とも思えない内容のものが多いので、前半は少し退屈に感じるかも知れません。更に、この作品は結構選択肢が多いのですが、選択肢を間違えると一発で死んで(?)しまい、初日に戻されます。まあ、どの選択肢を選べばそうなるかは、プレイしていればすぐ分かると思いますし、実はこれにも展開上意味があることが後々分かるので、そこはあまり気にしなくてもいいのですが、それでも後半までは「この物語は一体?」と感じるでしょう。

しかし、途中サラがとんでもないものを発見し、更に宇宙船の中の違和感に気付き始めてから物語がだんだん動き始めます。そしてそこからの恐るべき「二段オチ」。二段目は、一段目が来た時点で色々予想できるところはあるのですが、それにしてもかなり衝撃的な落とし方です。ですが、ただ気を衒って衝撃的なオチを持ってきただけでなく、そのオチが来ることで、作中の色々な違和感が解消される、伏線回収としても理想的な落とし方です。

ラスト直前に選択肢が3つ出てきて、その結果によりエンディングは3種類に分岐します。どれもが究極の選択で、しばらく考え込んでしまいました。エンドAは「何もなかったことにする」終わり方で、物語の締め括り方としては収まりがよくありません、が、まともな感性を持った人間なら、案外これを選びそうな気がします。エンドBは、玉砕エンドと言いますか、これはこれであの状況に置かれた人間の、自然な反応かも知れません。

そしてエンドCが終わり方としては一番綺麗です。あえてその後を描かずに終わったのは、全部のエンディングのどれもが真実でありうるということの現れなのかな、と思いました。エンドCであの先を書いていたら、これがトゥルーエンドということになってしまいますからね。物語としてはそうすれば気持ちがいいのですが、この作品のテーマはそこを描くことにはない、ということなのかなと感じました。

ストーリーを通して、退屈から緊張、そして絶望へという、主人公ハルが感じたであろう感情を、プレイヤーに追体験させるという意味で、非常に構成と描写、演出がよく出来ていたと思いました。「登場人物は楽しそうに日常を送ってるけど、プレイヤーは退屈」ならばよくあるのですが、この作品においてプレイヤーが感じる退屈さ、緊迫感、そして絶望感は、作中でハルがまさに感じたことなのです。これを狙って描いたのであれば、この作者さんのセンスには脱帽というほかはありません。

ツールはUnityの「宴」。このツールは起動時にウィンドウの大きさを決められるなど、独特な仕様ですが、他のツールと比べても何ら遜色はありません。ただ、テキストウィンドウの透過度が高い上に、フォントが細めのため、場面によっては文章がかなり読み辛い箇所があるのは気になりました。SFは、ちょっと構えてしまう人もあるかも知れませんが、難解なところもなく、それでいて主人公ハルと見事に気持ちをシンクロさせ、最後の驚くようなオチを体感させてくれる、かなりの良作です。SFだからと尻込みせず、是非プレイしてみてください。
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