第93回/テリブルサマーバケーション - ある夏の日、山荘にて……(三谷はるか) - ミステリー・サスペンス
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第93回/テリブルサマーバケーション - ある夏の日、山荘にて……(三谷はるか)

ミステリー・サスペンス
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ある夏の日、山荘にて……

ある夏の日、山荘にて……準推薦
■制作者/三谷はるか(ダウンロード
■容量/6.4MB

1970年代の夏。大学のサークルの仲間、大野浮矢に誘われ、伊豆にある彼の別荘へと招待された7人。計8人は別荘でのどかな一時を過ごすが、やがて恐ろしい殺人事件が……。孤立した洋館というよくある舞台だが、本格的な謎解きが求められる、パズラータイプの推理ノベル。

ここが○

  • 固いながらも整った文章で、文章力はとても高い。
  • 論理的な謎解きには唸らされる事必至。
  • かなりの文章量。おまけシナリオも豊富。

ここが×

  • ちょっと文章が固すぎる気が。中学生あたりだと多分辞書必携。
  • 作者さんは「難易度低め」と言ってるが、謎解きの難易度は全然低くない(笑)。
  • セーブ数が少なかったり既読スキップがないなど、プレイヤーに優しくない。

■テリブルサマーバケーション

初めに断っておきますが、私はこの手のいわゆる「かまいたちの夜」タイプのノベルゲームは、あまり好みません。なので、その手の作品が好きな方だと、多分この作品は「推薦」です。今回のレビューは「パズラータイプの推理小説が好きではない」「かまいたちの夜タイプのノベルゲームが好きではない」奴が書いてる事を、どうかご理解ください。それでも、堂々の「準推薦」。歯応えのある謎解きノベルゲームをご紹介です。

上の紹介文でもお分かりの通り、もうまんま「かまいたちの夜」タイプです。「氷雨」「七年凪」と、極めて設定や展開が酷似しています。まあ面白ければそんなものは問題ではないでしょう。この作品は、こと文章力に関しては今までご紹介した作品の中でも相当高い部類に入ります。ところどころ「大学生の一人称にしては、これはあまりに捻り過ぎじゃ?」「こんな難しい言葉をわざわざ使わなくても」という箇所もありましたが、それでもこれだけの量の文章を仕上げたのは、驚嘆に値します。

この作品は、純粋に謎解きを楽しむものとなっています。推理小説に謎解きよりもドラマを求める私のようなタイプの人間には、息がつまりそうになるところもありました。真面目に解こうとすると、文章の細部にまで目を光らせないと、全然真相に辿り着けないんですよ。かつ、シナリオ自体にドラマ性が薄く(動機の部分を上手く絡ませれば、面白くなった気も)、「トリックを解く」ではなく「物語を楽しむ」のが目的だと、楽しめない恐れもあります。

なのでこの作品は、純粋に歯応えのある謎解きを求める方向けです。作者さんは「難易度は低め」と書いてらっしゃいますが、全然低くないどころか、むしろかなり高いです(苦笑。作者さんが密かに仕込んだ、とあるトリックだけは、あっさり見破りましたが)。解決編に入ると、自分の推理を元に論理を組み立てていく事になるんですが(選択肢選ぶだけだけど)、僅かな判断ミスをつかれて推理が破綻する事多数で、何度も歯軋りする羽目になるでしょう。

しかしこの作品の素晴らしいところは、肝となる謎解きの部分が、唸らされるほど見事だという点です。作者さんは、かなり色々な推理小説を読まれてるんでしょうね。どこをとっても「そこはおかしいのでは?」という点がありませんでした。何せ、解決編では「はあー、なるほどー」と、モニターの前で感心してたくらいですから(笑)。今までのこの手の作品の中でも、この点については完成度ナンバーワンと言っても過言ではありません。

また、背景画像は、これは全部自前なんでしょうか。どれも良くできています。特に事件が起きた時の、あの画像(プレイしてからのお楽しみです。真夜中に一人でプレイするのはやめましょう)は、もう夢に出そうなほどで、思わずのけぞりました。音楽もメリハリが効いていて良かったですね。エンディングリストが出るのも親切です。ただ、真相にたどりついた時くらいは、もう少し凝ったエンディングが欲しかった気がしなくもありません。既読スキップがなかったり、セーブ箇所が5カ所しかなかったのも、ちょっと気になりました。「謎解きの面白さを損ないたくない」という思いも分からなくはないですが……。

今作はメインのシナリオだけでなく、おまけシナリオにもえらく力が入っています。他愛のないギャグみたいなものから、ちょっとした謎解き、そしてメインシナリオが解けない人のためのシナリオまで、よくここまで用意したなと思わされます。

と、本格謎解きノベルを求める方にはこれほどの逸品はないのですが、もう1つだけ気になった点。舞台は1970年代なんですが、「70年代の香りが全くしなかった」のが気になりました。ちょっと捻りすぎたキャラ名もそうでしょうし、キャラの会話も何となく現代風というか、全体に「単に携帯電話やパソコンが出て来ないだけの21世紀」という感じだったんです。この作者さんの力量からしたら、まだまだ凄い作品を作れると思いますので、あえてこの点を指摘させていただきました。

純粋な謎解きノベルで、複数回プレイしないと謎が分からない作品ではありません。上手くやれば、1回目で真相に辿り着く事も可能です。歯応えのある謎解きノベルをお求めの諸兄には、自信を持ってお勧めです。さあ、貴方は見事真相に辿り着けるでしょうか?
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